検査数値 裏読みナナメ読み

早期発見のカギ eGFRは60前後で治療すれば腎不全を免れる

クレアチニン値で腎機能を計算
クレアチニン値で腎機能を計算(C)日刊ゲンダイ

 腎臓の中にある糸球体は、老廃物を濾過する重要な働きがあります。たとえば慢性的な高血圧によって、その濾過機能が低下すると、体に必要なタンパク質が再吸収されず、漏れることも。そんな状態を放置すると、やがて腎不全となり、人工透析を余儀なくされますから、糸球体の濾過機能は早期にチェックすることが欠かせません。

 そこで重要なのがeGFRです。筋肉の代謝産物で尿から排出されるクレアチニンの数値を用いて推算します。

 前回、クレアチニンの数値は、採血と採尿の数値があることを説明。採血の値は腎機能が半分以下にならないと上昇しないため、早期チェックには不向きで、両方の数値を使うクレアチニン・クリアランスは、最低でも2時間の尿をためる検査時間の長さが不便だとお話ししました。

 ところが長年の研究の成果で、採血のクレアチニン値と年齢、性別の3つの要素から、糸球体がどれくらい濾過できるかを推算する計算式が分かったのです。その式は複雑なので、ここでは割愛します。ネットなどを参照して、健康診断の結果などを入力して求めてみるといいでしょう。

 健康な腎臓は、1分間に90mlの血液を濾過しています。ですから、正式な単位は「ml/分」で、90以上が正常です。一般の方が理解する上では、単位を「%」に置き換えて構いません。求められた数値の%が、その方の腎機能の割合と解釈すればいいのです。

 たとえば、計算結果が50なら腎機能は健康な人の半分。30なら腎機能が7割も低下しているということになります。

 15未満で末期腎不全で人工透析が必要になりますが、このような式が生まれたのは、そのような悲劇をなくすためです。なるべく60くらいのうちに腎臓内科などで治療をお勧めしたい。3割くらいに落ちると、治療を受けても人工透析は時間の問題ですが、60くらいで治療がスタートすれば、腎不全への悪い流れを食い止めることが可能ですから。

 腎機能を低下させる要因は高血圧のほか糖尿病も見逃せません。これらの治療と同時に生活習慣の改善も必要です。健診結果にクレアチニン値が書かれていたら、ぜひeGFRを調べ、万が一、数値が低下していたら、すぐに内科を受診することです。
梅田悦生・赤坂山王クリニック院長

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