一滴からのがん検診

「サリバチェッカー」が唾液中のがん特有の物質8種を検出

将来は卵巣、子宮のがんの判別も
将来は卵巣、子宮のがんの判別も(提供写真)

 たった一滴の唾液から、膵臓がん、大腸がん、乳がん、肺がん、口腔がんといったがんを高い精度で判別できる検査が、慶応大学と東京医科大学発のベンチャー企業・株式会社サリバテック社の「サリバチェッカー」だ。同社代表取締役でCEOの砂村眞琴氏は、「私たちの検査のキーワードは、簡便、低侵襲、低コストです」と、その長所を説明する。

 この検査は現在、東京都練馬区の大泉中央クリニックの院長を務めている砂村医師が、東北大学准教授時代から手掛けてきたがんの研究をベースにしたもの。プラスチックの容器に唾液を垂らすだけで行えるので、体への負担を全く与えることなく検査を実施できるとあって今、全国で広まっている。

「私はもともとがんの遺伝子異常の研究をしてきたのですが、遺伝子をチェックするための検査というのは技術的にまだまだハードルが高い。スクリーニング的に、誰もが簡便に行える検査を開発できないかと着目したのが、メタボローム(代謝物)解析と唾液でした。慶応大学の杉本昌弘先生との共同研究で、唾液中の成分からがんの診断ができることに気付き、実用化したのがこのサリバチェッカーなのです」

 唾液からがんの診断ができるのは、がんによって細胞が増殖する時に体の中でDNAの複製に関係する物質が増え、その影響が唾液中にも出るからだという。

 サリバチェッカーでは唾液中の8種類の物質を測定しているが、今は8種の物質を標準化し、唾液が濃い人でも薄い人でも診断に差が出ないように精度を高めている真っ最中だ。

「この検査の優れた点は、唾液を採るだけなので、職場や自宅など、どこでも実施できるところです。今は約70の医療機関で検査を受け付けていて、検査費用は2万円から4万円の間が中心です」

 早期発見が難しいとされている膵臓がんも、ステージ1からでも反応するという。物質の組み合わせによって、消化器系のがんか乳腺かなどある程度の判別も行う。今は検査結果を読み取る人工知能も改良中だ。

「従来広く行われてきたバリウム検査は、実は偽陽性や偽陰性、つまり当たらないことが多い上に体にも悪く、放射能被曝まであり、デメリットが多い。それに対し、サリバチェッカーは低侵襲、つまり体に害がないので、手軽に受けられます。胃がんの研究にも取り組んでいます。ご夫婦で誘い合わせて一緒に受けにくる方が多いのも、この検査の特徴ですね」

 将来的には、卵巣がんと子宮がんの判別も目指している。

(フリージャーナリスト・里中高志)

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