100年老けない脳の作り方

スマホで脳を活性化 使い方のカギは「能動的」と専門医師

写真はイメージ
写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 通勤の電車内で動画を見たり、ニュースをチェックしたり……。スマートフォンは、毎日の生活に欠かせない。依存症や眼精疲労、さらには記憶力の低下などデメリットも指摘されるが、脳のトレーニングになるという人もいる。“悪玉論”がはびこるスマホも、使い方次第というわけだ。どんな使い方がよくて、どんな使い方がよくないのか――。

 メッセンジャーやLINEなどのSNSは、通知機能が備わっている。仕事やプライベートの連絡に便利だが、それがよくないという。

「スマホが近くにあると、脳は無意識のうちにスマホに反応するための準備をします。家電の待機電力のような仕組みで脳のワーキングメモリーが無駄に消費される。そんな生活を続けると集中力はもちろん、記憶力や情報処理能力が低下することが分かっているのです」

 こう言うのは、本郷赤門前クリニックの吉田たかよし院長だ。「脳科学と医学からの裏づけ! スマホ勉強革命」の著者でもあり、脳の仕組みに詳しい。

 なるほど、東北大の研究グループは子供のスマホの使用時間と大脳の発達について調べた結果、使用時間が長いほど発達の遅れが見られると発表。スマホが絶え間なく膨大な情報を流し続けることから、「脳の過労」や「オーバーフロー脳」を指摘する発表も相次いでいる。

 スマホの通知に振り回されることは、サラリーマンならだれしもあるだろう。それで記憶力が低下したらたまらない。そんなリスクを回避するには、どうすればいいか。吉田氏に聞いた。

「仕事で使うかもしれないと、何となく検索したり、動画を見たりと、受動的にスマホを使うのがよくありません。判断する役割を担う脳の前頭前野がストップしてしまうのです。しかし、能動的にスマホを使えば問題ありません。検索する前には、5秒でいい、仮説を立てるのです。そうすると、答えが見つかったときに、『ああ、そうか』と腑に落ちたり、逆に『そんなはずはない』と軽い怒りを覚えたりするでしょう。仮説が当たっていてもはずれても、自分の判断を加えるため、脳の前頭前野が働きます。神経細胞が活性化し、認知機能が高まるのです」

 もうひとつは、スケジュール機能の活用だ。

「ToDoリストなどでやるべきことを管理する人は多いでしょう。もう一歩進めて、スマホのカレンダーなどにスケジュールとして入力するのです。たとえば、ダイエットが三日坊主になりやすい人は、会社帰りの予定に『散歩』を入力します。SNSなどの通知を“待ちの姿勢”で使うのはよくありませんが、“自分への指示”として使うのです。スマホの指示は決められた時刻に繰り返す機能がある。そうやって繰り返すと、脳が散歩を意識するようになるのです」

 音楽を聞かない人でもイヤホンを常備しておくといい。

「情報は、目で見るだけでなく、耳で聞く方が記憶として定着しやすい。たとえば、通勤中はニュースサイトで記事をチェックする人が多いでしょう。そうではなく、イヤホンをつけて、ラジオで聞くのです。記憶の中枢である海馬には、場所を認識する神経もある。風景が移り変わることで、そこが活性化して、移動していることを認識します。それによって、海馬全体が活性化され、記憶もより定着するのです」

 語学のトレーニングにスマホを使うのは、最適だろう。

「骨に衝撃が加わると、オステオカルシンというタンパク質が分泌されます。これは記憶力アップを助け、アルツハイマー病予防にもなる。ジョギングしたり、縄跳びをしたりしながら、耳から情報を入れるのは、より効果的です」

 中高年になると、「ほら、あれ」なんて言ったりする。そんな物忘れの症状は、スマホの使い過ぎによる脳の過労のせいかもしれないが、きちんと使えば脳の機能アップに役立つのだ。

■調査で判明 スマホ利用時間と学力の関係

 本文中の東北大の研究発表は、6年前に行われた仙台市の中学生の学力調査がベースだ。1日のスマホの利用時間を「全くしない」「1時間未満」「1~2時間」「2~3時間」「3~4時間」「4時間以上」に分けて数学の平均点を比較している。

 その結果、「全くしない」「1時間未満」が70点を超えた。スマホの利用時間が長くなるほど、平均点はキレイに右肩下がりになり、「4時間以上」は60点と10点以上ダウンする。

 さらに脳を画像検査で分析すると、脳全体をつなぐ神経線維の集まりである白質の発達が遅れていたという。子供との連絡手段としてスマホは必須アイテムだろうが、利用時間は1時間程度に制限した方がよさそうだ。

関連記事