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ハーバード大も注目 「ビタミンDでがん再発予防」の可能性

一日一度は日光浴
一日一度は日光浴(C)日刊ゲンダイ

 ビタミンD(以下Dと略す)サプリが、がんの発生や再発を予防するか否かを検証する臨床試験が世界中で行われている。なぜなら、がん患者とがんではない患者の血液中のD濃度を比較すると、前者で明らかに低いこと、さらにがん患者の中でも、D濃度が高い方が低い場合に比べて再発率や死亡率が低いことが報告されているからだ。

 今年4月9日、米国医師会誌「JAMA」に日本で行われていた最新の研究結果が掲載された。これは東京慈恵会医科大学分子疫学研究部が国際医療福祉大病院外科と共同で8年の歳月を費やしてまとめた「Dによるがん患者の再発死亡の予防試験(研究名・AMATERASU)」だ。手術治療後の消化管(食道・胃・大腸)がんの患者を対象に、Dサプリメントを1日2000IU(50μg)内服する群とプラセボ(偽薬)群にランダムに分け、どちらの群で再発や死亡が多いか二重盲検法で検証した。

 同大分子疫学教授で研究代表者の浦島充佳部長(顔写真)が言う。

「研究に参加していただいた患者さんは417人で、D群251人とプラセボ群166人に振り分け、比較しました。結果は、術後に内服を開始してから5年が経った時点で、D群の患者さんのうち再発なくご存命だったのは77%。一方、プラセボ群では69%でした。その差は8ポイントもありますが、統計学的に差があるとは結論できませんでした。しかし、たまたまD群はプラセボ群に比べて年齢が高い傾向にあったので、それを補正するとDが有効と判定されました」

 研究では、患者のもともとの血中のD濃度のレベル(高、中、低)で分けた観察も行っている。高レベルは少数なので省いているが、中レベルでは5年経過で見ると無再発生存率はD群で85%、プラセボ群では71%。この14ポイントの差は統計学的にも有意で、確実にがんの再発を抑えていた。この結果は「普段から高めの人でDサプリの上乗せ効果がある」と解釈できる。

 浦島部長らの研究が掲載されたJAMAには、ハーバード大の研究も同時掲載された。こちらは、手術適用外の大腸がんに対するDの効果を見る二重盲検ランダム化プラセボ比較試験(研究名・SUNSHINE)だ。

「SUNSHINEの結果は、我々の結果と驚くほど似ています。全体では差がないが、補正するとがんの進行を抑えるという結果です。また、今年1月に別の医学誌にハーバード大学の『Dががんの発症を予防できるか』を見る研究・VITALが発表されました。これも『予防しない』という結論でしたが、BMI(肥満指数)25未満に絞って解析をするとがんの発症を24ポイントも有意に予防しています。肥満の多い米国ではなく、日本でやっていたらDががん発症を防ぐという結果だったかもしれません」

 がんに対するDの効能で考えられているのは、免疫を介してがんを抑える説が有力だが、はっきりしたメカニズムは解明されていない。どんながん患者にDが効果的に作用するのか、まだまだ研究の余地があるという。

■1日1度の日光浴が予防につながる

 Dは食事(干しシイタケや青魚など)でも取れるが、9割は日光を浴びることにより体内で作られる。血中濃度を高めるには日光浴で十分という。

「日光を浴びる時間が長いほど血中濃度は高まりますが、夏なら30分、冬なら1時間ほどでいい。サプリメントも極端に大量摂取しなければ副作用はありません」

 一日一度は運動を兼ねて太陽の下で過ごそう。体内のDを高めに維持すればがんの発症を予防できる可能性が高まる。もしもがんになってしまったら、上乗せ効果を期待して術後からDのサプリを内服する。これがデータから見えてくる対がん戦略だ。

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