右側の腹痛に注意!死をも招く「総胆管結石」の疑いあり

コレステロールの多い食事も胆石の原因
コレステロールの多い食事も胆石の原因(C)日刊ゲンダイ

 腹痛はありふれた症状だが、みぞおちの右辺りが痛い場合、痛みが治まっても病院で検査を受けた方がいい。胆石や総胆管結石の疑いがある。NTT東日本関東病院肝胆膵内科の藤田祐司医師(胆膵グループリーダー)に話を聞いた。

 総胆管結石は胆石症の一種。結石が胆のうにできれば胆のう胆石、胆管にできれば総胆管結石だ。ただし、臨床の現場では完全に別の病気として捉えていると、藤田医師は指摘する。

「私たちが“胆石”と言う時は、胆のう胆石を指します。超音波で簡単に見つけられ、基本は無症状で、無症状の場合は治療の必要がない。お墓まで持っていける人が8~9割です。ところが、総胆管結石は、ほぼ100%症状が出る。爆弾を抱えているようなもので、当院では総胆管結石と判明したら、翌週か翌々週には治療を行うよう勧める。少しでも早く治療を行うべき疾患なのです」

 肝臓でつくられた消化液(胆汁)は胆のうで濃縮され、胆管を通り十二指腸に流れる。総胆管結石があると、胆管から十二指腸につながる出口に結石が詰まることがある。胆管は非常に細い器官で、結石が小さくても詰まる。ここに1日500㏄つくられる胆汁が流れてくると、詰まった結石で胆汁の流れがストップし、胆管が膨張。総胆管結石の症状である激しい腹痛が起こる。

 もし、結石が外れれば、痛みがウソのように治まる。しかし必ずしも外れるわけではない。

「すると十二指腸側から細菌が侵入し、胆管全体で細菌が繁殖し炎症が起こる。これが胆管炎で、細菌の繁殖が肝臓まで及ぶと、肝臓は血流が豊富なので、全身に細菌が回る。敗血症で死に至ることもある。だから、総胆管結石は速やかな治療が必要なのです」

 腹痛で受診し、総胆管結石による胆管炎を起こしている場合、内視鏡の緊急手術になる。結石が詰まっている出口からステント(ストローのようなプラスチックの筒)を入れ、胆汁が流れるようにする。点滴で胆管炎の治療を行い、炎症が治まったら、2度目の内視鏡で結石を取る。入院期間は10日ほど。

■痛みが治まっても危険は去っていない

 では、結石が外れたら? 腹痛はウソのように治まるが、“一件落着”とはならない。

「総胆管結石が十二指腸側に流れていればいいですが、外れて胆管に戻ったことも考えられる。ほかに総胆管結石があるかもしれない。画像検査で確認すべき。CTやMRIで総胆管結石がなくても、超音波内視鏡の検査を行ったほうがいい」

 総胆管結石は一般的にCTで調べるが、性質上あるいは大きさの問題で、CTでは確認できないものがある。しかし、超音波内視鏡なら見つけられる。超音波内視鏡は高度な技術が要求されるため、使っていない医療機関も少なくない。それでも藤田医師が超音波内視鏡の検査を勧めるのは、胆管がんの見落としを防ぐためでもある。

「総胆管結石の疑いでCTをしたが、何も見つからなかった。しかしその後、胆管がんが判明したという例があるのです。つまり、腹痛は総胆管結石によるものではなく、胆管がんによるものだった。『CTで見えない』ということがどういうことなのか? きっちり確認するには超音波内視鏡がベストです」

 総胆管結石があるけれど胆管炎はない場合、入院期間は3~4日。内視鏡で結石を取る。十二指腸側から胆管にアプローチするのだが、かなり難しい治療だ。膵炎発症リスクもあり、「急性膵炎診療ガイドライン2015」では発生率は5%前後。ただし、NTT東日本関東病院では、2・3%(18年1~12月のデータによる)。

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