老親の「外出がおっくう」「疲れた」は寝たきりの一歩手前

気持ちは若くても…
気持ちは若くても…(C)PIXTA

 老親が「疲れやすい」「買い物に行くのがおっくう」などと言いだしたら、「フレイル」を疑った方がいい。横浜市立大学付属市民総合医療センターリハビリテーション科准教授の若林秀隆医師に聞いた。

「フレイル」とは、体の予備機能が低下して健康障害を起こしやすくなった状態で、介護が必要となる前の段階。最も重要な要因となるのは、筋肉量が減少し、筋力や身体機能が低下している「サルコペニア」だ。

「身体的なフレイルは次の5項目でチェックできます。体重減少、筋力低下、歩行速度の低下、疲れやすさ、活動量の低下のうち1~2個該当すればプレフレイル、3個以上該当すればフレイルです」(若林医師=以下同)

 筋力は測定しないと分からないが、体重ならすぐ分かる。歩行速度というのは秒速1メートルで、歩行者用信号を青信号の間に渡りきれないなら問題。

 活動量の低下は、外出や体を動かす機会の減少を指す。

 50代のAさんの両親はともに80代前半。父親は山歩きが趣味で活動的。一方、母親は自宅で絵画を教え、社交的な性格だが、「少し歩くと息が切れる」と言い、自宅すぐのスーパーにも車で向かう。

 今年、Aさんと両親で旅行したが、その時も「動くのがしんどい」という母親を気遣い、近くのリゾートホテルに泊まらざるを得なかった。

 若林医師によれば、Aさんの母親はプレフレイル、またはフレイルの可能性が高い。

「少なくとも、疲れやすさや活動量の低下が見られるのでプレフレイルには該当するでしょう。5項目でチェックすると、ある年齢以上で運動習慣がない人などは身体的なプレフレイルやフレイルに該当しやすい。私も講演会で冗談交じりに話すのですが、疲れやすく筋肉量が落ちていて、高齢者でなくてもプレフレイルだと思っています」

■対策はしっかり食べてちょこちょこ体を動かす

 身体的なフレイルであれば、主な原因は3つ。低栄養、冒頭で触れたサルコペニア(筋肉量減少と筋力・身体機能の低下)、服用している薬の副作用だ。薬に関しては主治医や薬剤師に相談して対処を決めなければならないが、低栄養とサルコペニア対策は今日からできる。

 まず低栄養だが、「きちんと食べている」と思っていても、栄養が偏っていれば低栄養が疑われる。特に、高齢者は食が細くなっていたり、作るのが面倒だからと粗食になっていたりで、十分に栄養が取れていないケースが多い。

「BMIが30以上なら、どの年代でも減量が必要ですが、そうでなければ高齢者にとって“痩せ”は寝たきりなどを招きやすくなる。BMIは18.5以上が普通体重。しかし、65歳以上はBMIが21.5~24.9、50~64歳はBMIが20~24.9が目標の体重です。65歳以上で21.5より低い、あるいは50~64歳で20より低いなら、エネルギーを積極的に取って体重増を目指した方がいい」

 BMIは「体重(キロ)÷<身長(メートル)×身長(メートル)>」。高齢者でも「太るのは嫌」と考える人がいるが、健康のためには、小太りがいい。

 そして、もうひとつのサルコペニア対策は、日常的に体を動かすこと。若林医師は「病院で5階までなら階段を使う」「エレベーターに乗っている時などに爪先立ちなどの筋トレをする」といったちょこちょこした方法を取り入れている。

「膝が痛くて階段は無理なら、歩く時間を少し増やすだけでもいい。家の周りを1周歩くだけでもいいのです。あとは、椅子に座って膝を交互に伸ばす、太ももを交互に上げるなど。毎日やれば、全く違います」

 老親に、いつまでも健康で人生を楽しんでもらうために。

関連記事