病み患いのモトを断つ

発汗はエネルギー消費ではない 夏太りを招く「3つの誤解」

うまいんだけど
うまいんだけど(C)日刊ゲンダイ

 最高気温は全国各地で35度を超える。体温並みの猛暑はうんざりで、それに負けまいと頑張っていると……。意外と夏ヤセはせず、夏太りしたりする。そのまま味覚の秋に突入すると、大変だ。実は夏太りには、3つの誤解が密接に関わっているという。聖路加国際病院内科名誉医長で、「西崎クリニック」院長の西崎統氏に聞いた。

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 夏は暑く、汗をかく。代謝がいいはずなのに、なぜか太る。調査会社ネオマーケティングが、20~69歳の男女1000人を対象にアンケートしたところ、全体の41%が夏太りの経験が「ある」と回答。女性は、半数近い46%に上った。夏太りは性別や年齢に関係ないことが見て取れる。

「夏の発汗は、体温を下げるためのものでエネルギー消費によるものではありません。代謝がいいわけではないのです」

 北大の斉藤昌之名誉教授は気温19度と27度で褐色脂肪細胞の働きを調査した。褐色脂肪細胞とは、脂肪を燃焼させてエネルギーを生み出す働きがある。すると、19度では褐色脂肪細胞の働きが活性化して1日のカロリー消費量は1800キロカロリーだったが、27度では1400キロカロリーにとどまった。温度が高いほどカロリー消費は少なく、夏の方が冬より代謝はよくないということだ。

「寒い時は、体は体温を上げようとエネルギーを消費しますが、夏は暑さを感じてもエネルギー消費量はそれほどでもないのです」

 なるほど、夏太りの要因はそこか。ダラダラ流れる汗を“エネルギー消費のたまもの”と勘違いして食べ続けたら、太るわけだ。

■カリカリ梅や塩昆布を常備

 さらに別の勘違いも、夏太りを助長する。この激しい暑さによる熱中症予防に関する誤解だ。

「たくさん汗をかくと、ナトリウムやカリウムなどのミネラルも水分とともに失われます。だから水分補給では、ミネラルも一緒に補うことが不可欠です。それで、熱中症予防に最適な経口補水液を必要以上に飲むと、カロリーオーバーになりやすい。糖分が多いスポーツドリンクだと、なおさらです。熱中症予防の意識が強過ぎるあまり、経口補水液やスポーツドリンクを取り過ぎている方はとても多い」

 成人の経口補水液の摂取量は、1日500~1000ミリリットル。その最大量を摂取する時の糖分の摂取量は、18グラムで角砂糖4、5個分だ。500ミリリットルのペットボトルのスポーツドリンクに含まれる糖分の量は、多いものだと30グラムを超える。熱中症予防という“大義名分”があるとはいえ、何本も飲んだら、体に蓄積される糖分の量は半端なく、それが毎日になるとシャレにならない。

「3回の食事や梅干しなどでミネラルを摂取し、水やお茶で水分を補うのがちょうどいい」

 カリカリ梅や塩昆布などをカバンや机に常備しておくといいだろう。

 先週末の土用の丑の日にうなぎを食べた人は少なくないだろう。3つ目が、食事の誤解だ。

「うなぎは夏バテ予防の象徴的な食事で、そのうなぎに代表されるように、夏バテ予防の食事はカレーもカツ丼も牛丼も炭水化物が中心。つるつるとのど越しよく食べられるそうめんも同じです。夏バテ予防を意識し過ぎてそういう食事が続くと、そりゃ太ります。動物性脂肪を減らして、野菜を増やすこと。野菜は、食事の初めに取ることです」

 3つの誤解を解消して、夏太り撃退だ。

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