猛暑に気を付けたい病気

【脳梗塞】夏に多発 目に異常が表れたら躊躇せずに病院へ

睡眠中の脱水に拍車をかける
睡眠中の脱水に拍車をかける

 脳梗塞は、脳の血管が血栓によって詰まる病気だ。寒さで血管が縮み、血圧が上がりがちな冬に多い印象があるが、猛暑の脳梗塞を侮ってはいけない。

 脳梗塞患者およそ2万人を調べた脳卒中データバンクの資料によると、脳梗塞の発症は夏が最も多い。東邦大学名誉教授で平成横浜病院総合健診センター長の東丸貴信医師に聞いた。

「猛暑で全身が脱水状態になると、血液中の水分量が減少し、血液の密度が濃くなります。血液がドロドロの状態になると、血液同士の摩擦などの刺激により、血液を固める働きをする血小板が活性化され、小さな塊をつくり始めます。これを血小板凝集と言います。これに赤血球、フィブリノーゲン、白血球がくっつき血栓ができるのです。これが脳動脈を詰まらせ脳梗塞を発症させます」

 夏はビールなどのアルコールを飲む頻度が増えるが、寝る前の飲酒が睡眠中の脱水に拍車をかけ、脳梗塞の発症リスクを一段とアップさせることも忘れてはいけない。

 高血圧症などの生活習慣病がある人は若くても要注意である。

「お酒には発汗と利尿の作用があるため、寝ている間に大量の水分が失われていきます。“就寝中は、トイレに行かないから脱水にならない”と考えている人がいますが正しくありません。膀胱内にたまったものは、体内から排出されているのと同じです。血液中の水分が失われていることに変わりありません」

 脳梗塞の場合、発症までに一過性脳虚血発作(TIA)と呼ばれる前兆が表れることがある。「片方の腕や足など半身にしびれなどの異常を感じる」「ろれつが回らない」「視野が欠ける」などの症状が典型的だ。

 問題は、TIAを起こした人は3カ月以内に15~20%が脳梗塞になり、そのうち半数は2日以内に発症していることだ。

 実はTIA後の脳梗塞発症リスクを予測する方法がある。「ABC2D」スコアだ。①TIAが起きた時点での「年齢」(60歳以上は1点)②「血圧」(140/90㎜Hg以上は1点)③「症状」(片側麻痺は2点、麻痺なしのろれつ障害は1点)④「症状持続時間」(60分以上2点、10~59分1点)⑤「糖尿病」(ありは1点)を計算するもの。合計が3点以上で入院治療が必要とされている。 

 とはいえ、素人目には何がTIAなのかわからないことも多い。そんなときは目の異変を重視することだ。

「TIAは、動脈硬化で頚動脈が狭くなり血流不足による虚血で起こることもありますが、半数近くは頚動脈硬化巣にできる血栓が脳の動脈に飛んで一時的な脳虚血を起こします。その多くが脳の中に入った直後に目の動脈を塞ぎ、全体の3分の1に視野の障害が出ます。だからこそ、突然シャッターが下りたように目の前が真っ暗になったり、視野が狭くなったり、物が二重に見えたりしたら、ためらわず、すぐに病院で診てもらうべきです」

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