【Q】そもそもインプラントってなんですか?
【A】インプラントとは「人工的な歯」のことです。何らかの理由で歯を失ったところの骨に、ネジの形をした「インプラント体」という金属(チタンなど)を埋め込んで土台を作り、その上に「上部構造」と呼ばれる人工の歯を接続するのです。
人工の歯もさまざまな材料が使われていますが、最近は「ジルコニア」というセラミックスが多くなっています。インプラント体と上部構造の間に中間構造体である「アバットメント」と呼ばれるパーツを接続する場合もありますが、使うか否かはメーカーや施術者の考え方によります。
勘違いされている患者さんも多いのですが、歯の根が残った状態ではインプラント治療は行えません。
歯の根が残せる状態であれば、歯科医は「差し歯」にすることを勧めるはずです。
80代の女性で、下の奥歯に、入れ歯が入っている患者さんがいらっしゃいました。昔から漬物が好きだったそうですが、他院で部分入れ歯にされてからは噛み切ることが難しくなり、ただ、なめるだけでガマンされていたそうです。家族からの応援もあり、当院でインプラント治療を受けていただくことになりました。「右側でしか噛まないから」とおっしゃるので、右下の奥歯の位置に4本、埋入しました。治療後、「お漬物を噛めるようになったときは、うれしくて涙が出てきた」と感謝されたとき、心の底から良かったなと思いました。
通常、「インプラントは左右に分けて均等に入れたほうがいいですよ」と説明を受けると思いますが、僕は年齢や生活習慣と本人の意思を尊重し、「その患者さんにとってベストな選択」をすることが歯科医師として最も重要だと考えています。
「噛むことは人生終盤に残された最後の楽しみ」ともいわれます。インプラント治療は歯を失われた多くの患者さんのQOL(生活の質)の向上に役立っていますが、さまざまな誤解があるのも現実です。
そのあたりに関しても、この連載で取り上げていきたいと思います。
(構成=小澤美佳)
歯の疑問 ずばり解決!