リンゴを食べて喉がかゆくなったら…食物アレルギーを疑え

大人も子どもも発症する
大人も子どもも発症する(C)日刊ゲンダイ

 年々増えているのが「アナフィラキシー」だ。引き金になるのが、食物、ハチなどの昆虫、造影剤、解熱鎮痛剤や抗菌剤などの医薬品。子どもも大人もなる。

「生後4カ月の娘に初めて粉ミルクを飲ませたら、1~2滴しか飲んでいないのにバーッと吐き出したんです」

 こう話すのは、「大阪狭山食物アレルギー・アトピーサークル Smile・Smile」代表の田野成美さん。今から15年前のことだ。

 娘の顔はみるみる腫れ、顔は土気色。救急車を呼ぼうにも混乱して番号を思い出せない。その間に娘は顔が白く、体は冷たくなっていく……。

「幸いにも救急車で病院に運ばれ命は助かりました。食物アレルギーによるアナフィラキシーでした」(田野さん)

 アナフィラキシーとは、短時間に全身に表れる激しいアレルギー症状だ。血圧低下や意識障害を伴うアナフィラキシーショックに至ることもある。対処が遅れると命を落とす危険がある。知っておくべきことを、食物アレルギーに詳しい国立病院機構相模原病院臨床研究センターの佐藤さくら医師に聞いた。

【花粉症の人は食物アレルギーを発症しやすい】

「花粉の抗原と似ているものが食物の中にあるため、花粉症の人は新鮮な果物や野菜を食べると口や喉のかゆみが出る『口腔アレルギー症候群』という食物アレルギーを起こしやすい。中にはアナフィラキシーを起こす人もいる」 

 これまで食べられていた人が、ある日突然発症。子どもの場合には花粉症を発症する前に「口腔アレルギー症候群」が表れることもある。リンゴやモモなどの新鮮な果物で起こしやすい。いつもは軽めの症状の人でも、食べた後に運動したり飲酒したりすると、一気に悪化することも。

「ダメな食品をきちんと診断してもらい、アレルギー症状が出ないように避ける。免疫療法で花粉症を治療することで、食物に対するアレルギー症状が良くなったという報告もあります」

 花粉症以外に食物アレルギーのリスクがあるのは、大人の場合、アトピー性皮膚炎があり、職業的に同じ食品によく触れている人。手荒れで食べ物の抗原が体内に入ってきやすい人などだ。 

【要注意な症状】

 アナフィラキシーが疑われる時は、「エピペン」というアドレナリンをすぐに筋肉注射する。しかし、最初の発作ではエピペンを持っていない人も多いだろう。

 アナフィラキシーの診断基準は、全身の発疹や紅潮、呼吸困難、喘鳴など複数の臓器に症状が出ること。速やかに治療をしないと血圧低下や意識障害が見られればアナフィラキシーショックを起こし死に至ることもあるので、アナフィラキシーが疑われる時には救急車を呼ぶべきだ。診断基準の詳細は、ネットで「アナフィラキシーガイドライン」を見ることができる。

【“できるだけ食べさせる”治療に】

 子どもの食物アレルギーの場合、アナフィラキシーなどを起こさないために、かつてはNG食品を「食べさせない」治療が中心だった。

「今は食物経口負荷試験を受けて、本当に除去が必要な食物を特定していく治療が中心です。子どもの食物アレルギーは成長とともに多くは自然に治っていきます。血液検査などを参考に定期的に食物経口負荷試験を受けて、本当に今も除去が必要か、確認していくことが大切です」

 食物経口負荷試験は何歳でも受けられる。ただし乳幼児期など可能な限り早い方がいい。

「食べられない期間が長くなると、食べられるようになってからも『味があまり好きじゃない』となる傾向があります」

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