歯の疑問 ずばり解決!

インプラントは人工物だから虫歯にならない…は大きな誤解

写真はイメージ
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【Q】インプラントはどのくらい持つのでしょうか

【A】「一生持つ」とは言い切れません。人工の歯ではありますが、インプラント周囲炎などの病気になって外れてしまう可能性もあるのです。

「インプラントは人工物だから虫歯にも歯周病にもならない」と思っているとすれば、それは誤解です。インプラント治療を希望される患者さんの多くは過度に期待し、「一生使える」「第二の永久歯」と幻想を抱く方がいらっしゃいますが、大きな誤解なのです。

 インプラントにも歯周病は起こり、それを「インプラント周囲炎」と呼びます。虫歯も歯周病も細菌によって引き起こされますが、インプラント周囲炎も細菌感染によって起こります。

 よその医院でインプラント治療をして3年くらいしか経っていないのに揺れてきた……というお悩みで来院された女性の患者さんがいます。その方は20代のときに前歯を事故で失い、ブリッジにするため残った奥歯を大きく削ったそうです。しかし、そのブリッジも外れて前歯がなくなってしまい、「一度は自殺も考えた」とおっしゃっていました。

「入れ歯しかない」と、何とか40年我慢して生きてきたところ、インプラントの存在を知り、都内の歯科医院でインプラント治療を受けたのです。しかし、数百万円かけたインプラントが揺れてきて不信感が募り、当院に飛び込んできたのでした。

 治療に取りかかろうと麻酔をして上部構造(かぶせ物)を外そうとすると、何と上顎すべての歯がインプラントごと外れました。インプラント周囲炎でした。

 インプラントは悪い治療ではありません。多くの患者さんの生活の質の向上に欠かせない医術のひとつです。しかし、通常の歯科治療以上に慎重な診断が必要で、生体解剖、材料、免疫、組織、病理などの基礎知識。さらには口腔外科、補綴(ほてつ)、歯周、放射線、麻酔などのさまざまな歯科臨床の知識と技術が求められます。ですから、慎重に歯医者さんを選ぶ必要性があるということなのです。

(構成=小澤美佳)

北沢伊

北沢伊

1977年7月8日、長野県生まれ。斉藤歯科医院院長。2003年に日本大学松戸歯学部を卒業。同年から同院に勤務し、13年から院長に就任した。若手歯科医師に向けたセミナーの講師を務め後進の育成にも取り組んでいる。日本口腔インプラント学会専門医。千葉県歯科医師会所属。

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