膵がんを知る

膵がん早期発見「超音波内視鏡」だけでなく総合診断が必要

写真はイメージ
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「超音波内視鏡」(EUS)は膵がんの早期発見の有力な武器であることは間違いありません。膵臓は体の奥深くにあり、内視鏡であってもその中に入ることができません。ところが、内視鏡の先端に超音波診断装置を取り付けたEUSなら、胃や十二指腸越しに膵臓を観察することができます。最近では内視鏡の先端から針を出して、がん病巣に差し込み、組織を採取する「超音波内視鏡下穿刺吸引法」(EUS―FNA)も急速に広まっています。

 ところが、日本膵臓学会が作成した「膵癌診療ガイドライン2019年版」では「推奨の強さ:弱い、エビデンスの確実性:C(弱)」となっています。その理由は何なのでしょうか?

 EUSではまれに出血、穿孔、ショックといった偶発症が発生することもありますが、臨床的にはガイドラインが引用した論文ほど高い成績が得られるとは限らないからでしょう。

 EUSは操作する医師の技量などにより、その結果が異なります。中には病変を見落とすケースもゼロではありません。また、肝臓に向かう太い血管の門脈といわれる部分に浸潤したがんを見つけるのは得意ですが、必ずしも膵臓全体から小さながん細胞を見つけるのが得意であるわけではありません。

 EUS―FNAにしても、早期である1センチ前後の膵がんの細胞を2センチ以上離れた胃や十二指腸の中から穿刺して、診断に足る十分な細胞を回収するのはかなり困難です。その成功率はそれほど高くありません。

 ですから膵がんの見落としを防ぎ、膵臓の病変の詳細を知るには造影CTやMRIなど、ほかの画像診断の所見と突き合わせて最終判断することが重要です。現時点ではEUSは補助的診断だと考えます。

 私は日本消化器内視鏡学会認定指導医でもありますが、膵がんの診断はEUSのほかに、ダイナミックCTと「磁気共鳴胆管膵管造影」(MRCP)の所見を総合して行うようにしています。

 ちなみにダイナミックCTとは肝臓や膵臓・胆嚢・脾臓などの病気を診断する際に造影剤を30秒間隔で注入し、その後、一定時間に同じ部分を撮影する検査のことです。造影剤を入れて複数回撮影することで血流の流れや病変と正常組織の造影剤の到達具合を比較して、どういう病気かを診断していきます。

 マルチスライスCTを使うことで、より小さながんまで見つかるようになりました。

 MRCPはMRI装置を使って胆嚢や胆管、膵管を同時に抽出する検査法です。膵臓の前がん病変などを検出するのに特に優れているといわれています。

(国際医療福祉大学病院内科学・一石英一郎教授)

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