がんになったら最初から「緩和ケア」を…最新事情を知る

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 2人に1人ががんを発症するといわれる時代。押さえておきたいのが、緩和ケアについてだ。緩和ケアによって生命予後が延びたという報告もある。

 こんな研究結果がある。転移のある非小細胞肺がん患者151人を対象にしたもので、標準的な抗がん剤治療の患者と、抗がん剤に加えて早期から緩和ケアチームによる月1度以上のサポートを受けていた患者とを比較したところ、緩和ケアチームのサポートが加わった患者の群は、QOL(生活の質)の向上、うつ症状の軽減が見られた。

 また、亡くなる60日以内の抗がん剤の使用は減少。すなわち、ぎりぎりまで抗がん剤治療を受けることなく、緩和ケアの群は2・7カ月長く生きられた。

「心身の痛みやつらさがあると、眠れず、食事ものどを通らず、抵抗力が落ちて十分ながん治療を受けられません。痛みやつらさが緩和すれば、治療も頑張れ、長生きにつながるでしょう。また逆に、体力が落ちた状態で無理な抗がん剤を受けることがなければ穏やかに過ごせるでしょう。がんになったら緩和ケア。最終的にではなく、ぜひ最初から受けてほしいのです」

 こう言うのは、都立駒込病院緩和ケア科部長の田中桂子医師だ。

■病院でも自宅でも受けられる

 緩和ケアというと「余命宣告を受けているがん患者が対象」という印象を抱いている人が多い。しかし実際は違う。田中医師の言葉通り「がんになったら、最初から」なのだ。また、病院に行かないと受けられないのではなく、緩和ケアに詳しい在宅医も増えているので、自宅で緩和ケアを受けることも可能だ。

 緩和ケアには医師や看護師のほか、心理士、栄養士、薬剤師、歯科医、ソーシャルワーカーなどさまざまな専門家が関わっており、体や精神面の不安やつらさ、医療費の不安、職場との対応など、多方面の悩みに対応してくれる。

「患者さんの人生の質を良くして、その方らしく生きられる方法を見いだすのが緩和ケア。質を良くして長生きし、また長生きして質を良くする、という両輪で対応します」(田中医師=以下同)

 がんで治療を受けていたが、延命のための治療が効かなくなった――。この場合、痛みなどの苦痛症状をコントロールしながら、療養する場所として自宅、または緩和ケア病棟という選択肢がある。緩和ケア病棟への入院も今後の選択肢のひとつにあるなら、早めに面談の申請をすべきだ。

「緩和ケア病棟の入院はすぐには難しいことが多い。都立駒込病院で言えば待ち人数10人ほどで、少なくとも1週間前後は待たなくてはならない。緩和ケア病棟の入院は、先駆けて面談や手続きが必要で、これすらも待たされる。面談や手続きを先にやっておけば、時間が短縮されます」

 面談しても、必ず緩和ケア病棟に入院しなければならないわけではない。入院するかどうかは後で決められる。なお、緩和ケア病棟を持つ医療機関でも、緩和ケア病棟が満床時には一般病棟へいったん入院できるところと、そうでないところがある。最初に確認しておいた方がいい。

 緩和ケア病棟に入院したら自由に過ごせない――。そう思っている人もいるかもしれない。しかし、“してはいけないこと”はほぼない。

「たばこはさすがに難しいですが、お酒もOKですし、好きな食品を食べてもOK。のみ込めない場合は、どうすればその料理を楽しめるか、スタッフと共に考えます。ペットとも会えますし、ある女性の患者さんは、旦那さんがずっと同じ病室に泊まり込み、病室から毎日出勤していました」

 覚えておこう。

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