90歳現役医師 最強の体調管理

「40歳を超えたらテストステロン測定を」現役医師が推奨

53歳Aさんのケース(左)と59歳Bさんのケース
53歳Aさんのケース(左)と59歳Bさんのケース(提供写真)

 テストステロン低下が原因でメタボリック症候群になった53歳の患者(Aさん)のケース。メタボと診断され、糖尿病の指標値であるHb(ヘモグロビン)A1cが8・5(正常は6・0未満)と高く、関連したデータの数値も良くなかったのだという。

「医者にもっと運動をしなさいと注意されても、『運動どころか、仕事もやる気がしません。私はもうおしまいです』とまで言う。まずは運動をしようと意欲が湧いてくるだけの元気を付けないといけません。そこで、フリーテストステロン値などの詳細な検査を行ったところ、男性更年期障害だと判明。テストステロンを補充する治療法を行いました」

 治療の結果は円グラフ(生活の質:生きる上での満足度を示す検査=掲載図)の通り、初診時とテストステロン補充治療後を比較すると、図の円が大きくなっていて、体調が回復しているのが分かる。

「彼は運動する気も出てきて、ジムに通い、トレーニングをするように。たるんでいた体は見事、筋肉質に変身。テストステロンを補充したことで、人生が明るく、楽しいものに変わったのです」

 中高年男性で糖尿病と疑われる場合は、前出のHbA1cの上昇がチェックされる。正常値は6・0未満だが、これを超えてくると管理高血糖を言われ危険な状態となり、さまざまな合併症を引き起こすリスクが出てくる。

「私の外来に来た患者のBさん(59)は糖尿病そのもので調子が悪いというよりも、『生活をしている上で、あれもこれもダメと指導されること自体がすごいストレスです。ただでさえ、糖尿病で落ち込んでいるのに、生活の制限でもっと憂鬱になった』と訴えていました。糖尿病で元気がなくなるのはテストステロンが減っているからに他ありません。そして、テストステロン低下により、インスリンの働きも低下、インスリン抵抗性が高くなり、結果としてHbA1cが上がってしまう。この患者さんを調べてみるとやはりフリーテストステロン低下が分かり、それによって体調不全症状が出ていました。そこで、テストステロン補充療法をしたところ、8・2だったHbA1cが6・6にまで下がり、元気が回復しました。ところが、『テストステロン補充は、いろいろな障害を起こすのではないか?』とご家族の強い反対で、投与量を半減してしまった。すると数値は元の状態に。元気もなくなりました。患者さんの訴えで、テストステロン投与を元の量で再開すると再びHbA1cは下がり、体調も改善。健康度を測る円グラフが大きく広がり、回復が如実に表れました。男性は40歳を過ぎたら、自分の身を守るために、男性ホルモンのフリーテストステロン値を測定してみるべきです。テストステロン低下によってインスリン抵抗値が落ちてくることも見過ごされているので、糖尿病でお悩みの方は、ぜひ医師にフリーテストステロン測定を申し出てみてください」

(構成=中森勇人)

熊本悦明

熊本悦明

1929年、東京都生まれ。東京大学医学部卒。日本メンズヘルス医学会名誉理事長、札幌医科大学名誉教授。現在は「オルソクリニック銀座」(東京・中央区)で、名誉院長として診療中。近著「『男性医学の父』が教える 最強の体調管理 テストステロンがすべてを解決する!」(ダイヤモンド社)がある。

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