遺伝子治療薬はここまで来ている

国内では4種類 遺伝子治療薬で治療できる病気はまだ限定的

写真はイメージ
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 遺伝子治療薬について理解を深めるため、これまで遺伝子治療の背景を説明してきました。

 現在、国内で使われている遺伝子治療薬は4種類で、海外を含めても5種類です。また、対象となる疾患や症状も4種類ですので、現時点では遺伝子治療薬によって治療できる病気は極めて限定的といえます。遺伝子治療は近年急速に開発されていますが、まだまだ「どんな病気でも治る」というステージまでは来ていないということです。

 いま使われている遺伝子治療薬は、それぞれまったく異なる作用によって効果を発揮します。基本的には、「足りない遺伝子を補うもの」と「病気の原因となる遺伝子を無効化するもの」に大別できます。

 足りない遺伝子を補う薬の成分はDNAで、目的の遺伝子を発現する型となるものを直接細胞に入れ込むことで効果を発揮します。

 一方、病気の原因となる遺伝子を無効化する薬の成分もDNAと同じような核酸と呼ばれる物質です。目的の遺伝子を無効化する作用は現在のところ2種類あり、目的の遺伝子と結合する(トラップする)ものと、目的の遺伝子をバラバラに分解してしまうものがあります。いずれも、体に悪さをして病気を引き起こす遺伝子を働かなくすることで効果を発揮します。

 また、これらとは別に自分の細胞を一度取り出し、その細胞に体外で遺伝子導入を行って病気を治すように強化した細胞を再び自分の体に戻すという治療法(薬)もあります。一口に遺伝子治療といってもさまざまな方法があるのです。

 それらに共通していえるのは、「値段が従来の薬とは比べものにならないほど高い」ことと、「効果が非常に高い」ということです。

 今後、さらにたくさんの病気に対する遺伝子治療薬が開発され、これまでは治療が難しかった病気も治っていくようになる。そんな発展が期待されます。

神崎浩孝

神崎浩孝

1980年、岡山県生まれ。岡山県立岡山一宮高校、岡山大学薬学部、岡山大学大学院医歯薬学総合研究科卒。米ロサンゼルスの「Cedars-Sinai Medical Center」勤務を経て、2013年に岡山大学病院薬剤部に着任。患者の気持ちに寄り添う医療、根拠に基づく医療の推進に臨床と研究の両面からアプローチしている。

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