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風邪で抗菌薬は不要 医師が苦笑する「DU処方」って何だ?

6割は不要の抗生物質
6割は不要の抗生物質

 インフルエンザならまだしも、風邪くらいでは仕事を休めない。それがブラック的思考かどうかはともかく、そう思うことは少なからずあるだろう。風邪やインフルを押して仕事に出かける人が続出する今、見逃せないニュースが報じられた。病院で処方される抗菌薬(抗生物質)の6割近くが、不必要な処方だったという。

 自治医大などの研究チームは2012~14年度に処方された抗菌薬と対象の病気を診療データなどから調査。抗菌薬の処方数は約8957万件。そのうち肺炎や尿路感染症など抗菌薬が必要な疾患に処方されたのはわずか8%で、風邪や急性気管支炎など本来、不要な病気への処方が56%に上った。

 人口1000人当たりで比べると、日本の抗菌薬処方数は米国の1・4倍だったという。赤坂山王クリニックの梅田悦生院長に聞いた。

「抗菌薬が不適切に処方されると、薬剤に耐性を持つ耐性菌が生まれるため、厚労省も『抗微生物薬適正使用の手引き』で『感冒(風邪)に対しては、抗菌薬投与を行わないことを推奨する』と記載しています」

 風邪で抗菌薬は一般的に不要なのだが、それでも処方されているのが経口第3世代セフェムと呼ばれるタイプで、セフカペンやセフジトレンなどが知られる。実はこれ、体内への吸収率が悪く、ほとんど排泄されるため、医師の間で“DU(=だいたいウンコになる)処方”なんていわれることもあるのだ。

 では、風邪はどうやって対処すればいいか。

「風邪の原因は、ウイルスが8~9割を占めています。抗菌薬が効くのはせいぜい1~2割で、ウイルスには効きません。ですから、風邪の大多数を占めるウイルス性のものには、処方薬でも市販薬でも、咳や痰、鼻水・鼻づまり、熱などそれぞれの症状に応じた薬を服用する対症療法がセオリー。対症療法というと、決め手に欠けるようなイメージですが、それでも風邪なら、1日か2日でよくなります。抗菌薬が本当に必要なのは、2次的に肺炎を起こしたり、へんとうに炎症が及んだりするケースです」(梅田氏)

 抗菌薬で下痢になることもある。取り立てて問題ない風邪と診断されたら、患者が「抗菌薬は不要」という意思表示するのも重要だろう。

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