【Q】 転びかけた子供の手を引っ張った後、急に「痛い」と泣き出し、肩を上げず、手を動かさなくなりました。どんなケガでしょうか? (子煩悩な37歳の男親)
【A】「肘内障」と呼ばれるケガでしょう。「肘がはずれた」と表現される病態で、就学前のお子さんに多く発症します。
ご質問の親御さんのように子供と手をつないで歩いているときに、子供が転ぶのを防ぐため、とっさに子供の手を引いた際に発症するのが典型です。
「肩がはずれた」ということで来院され、実際は肘だったということも少なくありません。
主な症状は痛みです。腫れや関節の変形などはみられません。肘の関節の外側を押すと痛みを訴えます。前腕の手のひらが下に向くように回転させて軽く肘を曲げ、肩を動かさないようにして手を使おうとしない姿勢を取り続けます。簡単に言うと、痛くて腕をだらりと下げて手を動かさなくなる状態です。
原因は強い牽引力に前腕の手のひらを下に向くよう回転させる力が加わったことで、2本ある前腕の長い骨の1本である、橈骨の端にある円盤状の部位(橈骨頭)を取り巻く輪状靱帯がはずれかかっているためです。脱臼とは関節を構成する骨同士の関節面が正しい位置関係を失っている状態を言います。亜脱臼は、一度何らかの原因によって、脱臼を経験した部位が、治療後も軽度な力が加わっただけで、脱臼を繰り返してしまう病気のことですが、肘内障で橈骨頭が亜脱臼することがあります。
診断は比較的簡単です。腕を引っ張られたという状況と肘関節の外側を押して痛みを感じるようであれば「肘内障」が疑われます。
なお、状況によっては「肘関節周辺骨折」あるいは「鎖骨骨折」が疑われるケースがあり、鑑別が必要です。一般の方は、なぜ「鎖骨骨折」が疑われるか不思議に思うかもしれません。実は、転倒して手や肘、肩を打ったときには「介達外力」といって、接地した部位に直接損傷を与えるのではなく、体内組織を通じて別の部位に作用する外力により、一見無関係に見える鎖骨が骨折することもあるのです。
心当たりのある場合は自己判断せず、まず医療機関に相談してください。
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