私たちの赤い血液はどこで造られるのでしょうか。
生まれたときは、肝臓や脾臓で造られますが、だいたい胎生5カ月ごろになると、これらの血液を造る組織は順次萎縮してきます。
その後、出産するまでは造血の場所が大人の造血器官である骨髄に移ります。 骨の中にある海綿体上の骨髄は、まさに「血液の工場」と言ってよいでしょう。
随時造られている血液のもとである造血幹細胞は、造血因子(細胞から分泌されるタンパク質の一種)に働きかけられ、分裂による増殖を繰り返しながら分化し成熟していきます。
出来上がった血液細胞のひとつが血液の97%を占める「赤血球」です。どのような形をしているかというと、直径が7・5マイクロメートルで厚さが約1~2マイクロメートルの中央がややへこんだ円盤状で、その体積の3分の1は「ヘモグロビン」(酸素の運搬を担う複合タンパク質)が占めています。ただし赤血球は、白血球のような普通の細胞が持つ細胞核やミトコンドリア(エネルギーを作る細胞小器官)を持ちません。標準的な体格の成人なら毎日、骨髄で2000億個弱の赤血球が造られています。
この赤血球の優れた機能は柔らかく変形できることです。自分の大きさの直径半分以下の毛細血管まで入り込み、通過することができます。まるで猫ですね。ただし、寿命は120日間ぐらいです。体をくまなく巡り、老化した赤血球はどんな運命をたどることになるでしょうか。
まず嫌気的解糖系(酸素を必要とせず糖質を分解してエネルギーを生み出す)が衰えます。このため、変形して毛細血管までたどり着いていた赤血球の柔らかくなる能力も衰えてきます。
そうしていよいよ老化した赤血球は脾臓や肝臓、骨髄の血管内に張り巡らされている、網内系と呼ばれる血管内腔を覆う細網細胞と付随する網目構造上の組織にとらえられます。
そして最後は、脾臓などの「マクロファージ」(白血球の一種。死滅した細胞やその破片を除去する)によって貪食されてしまうのです。ヘム鉄から離されたグロビンは肝胆系で分離され、腸に排出されてステルコビリンとなります。大便が黄色いのはこの赤血球のなれの果てのためです。なお、細胞核を持つ「白血球」(大きさ7~25マイクロメートル)には、殺菌や免疫の働きをしているさまざまな種類の細胞があります。
「血小板」は直径2~3マイクロメートルの大きさで、血液を固まらせて止血をしますが、赤血球のように細胞核は持っていません。
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