人気ドクターが指摘 「目」の問題解消がボケ対策に役立つ

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 サバ缶が大ヒットしたのは2017年のこと。サバに豊富なDHA・EPAの健康効果がテレビで紹介されたのがきっかけだ。その人気は一過性で終わらず、同じくDHA・EPAが豊富なイワシ缶も大ヒットした。この注目の健康効果のひとつが認知症予防だが、認知症予防を考える上で、サバ缶・イワシ缶に加えて、絶対にやっておくべきことがある。

 認知症の中で多くを占めるアルツハイマー型認知症は、脳の神経細胞が減って脳が小さく萎縮してしまう病気だ。記憶力や思考能力などがゆっくりと落ちていく。進行を緩やかにする薬しかなく、予防が大事になってくるが、しばしば取り上げられる食事や運動とは違い、見落とされがちなのが「目」だ。

 二本松眼科病院(東京・平井)の平松類医師は職業柄、高齢者と接する機会が多く、延べ10万人以上の高齢者と接してきた。

「眼科は認知症が専門ではないので、認知症になりかけの人、軽症の人、進行している人など、さまざまな高齢者と接します。その中には、目の病気の治療で見え方がよくなったら、家族が“認知症だから”と諦めていた症状が解消したケースもあるのです」(平松医師=以下同)

「すでに認知症は発症しているが、目をよくしたら、自力で歩いたり、身の回りのことができるようになった」というケースもあるという。

 視覚の低下が認知症を発症しやすくするということは、論文でも発表されている。25万752人を対象にした中国の研究では、視覚・聴覚障害がなければ認知症の発症率は0・41%だが、視覚障害があると0・83%と2倍までリスクが増えた。この論文では聴覚障害と認知症の関係も指摘しており、視覚障害と聴覚障害の両方があると、3倍の1・27%までリスクが増えた。視力の悪い人の方が、見え方がいい人に比べて2~3倍認知症になりやすいという結果は、ほかの研究でも出ている。

 また、英国の研究では、認知症の人の33・5%は視力が0・5以下と悪かった。視力の悪さは、目の病気に限らない。メガネが合っていないこともあるからだ。本を読めない認知症の人に合ったメガネをかけてもらうと、3分の2の人が本や新聞を読めるようになったという報告もある。

「目からの情報は膨大です。目に問題があって見え方が悪くなると、その膨大な情報がシャットアウトされるので、認知機能が衰えて、認知症を引き起こしてしまう。ただし、目が見えにくいから認知症のような症状がある、または、目が見えにくいから認知症を発症しているかどうかは、判別しづらい。だから、認知症発症前には眼科を受診し、病気があれば治療を受ける、認知症発症後は目の検査を定期的に受けることが大切です」

 高齢者の目の3大病気が、白内障、緑内障、加齢黄斑変性だ。いずれも治療法があるので、冒頭のサバ缶、イワシ缶より、ある意味、確実な認知症予防といえるだろう。

「80歳以上では99%が白内障ですが、白内障の人が手術でよく見えるようになると、60%の人で認知機能の改善があったことが分かっています」

 白内障は「ものがかすんで見える」「明るいところがまぶしい」、緑内障は「視野が欠ける」、加齢黄斑変性は「見たいところが見えない」が典型的な症状。

 緑内障と加齢黄斑変性は、治療が遅れれば失明する可能性がある。速やかな対応が必要だ。

 片方の目に発症している場合、もう片方の目で視力を補っていることもあるので、時々片方ずつ、見え方のチェックを。

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