【Q】歯科医院に行くと怖くて震えが止まらず恐怖心を克服できないので通院できません
【A】歯科恐怖症の方は大勢いらっしゃいます。その多くは過去の歯科治療時の苦痛体験の影響だと報告されています。ここまで痛みに耐えたのか、と驚くような、ひどい状態になってからようやく口の中を見せてくださる患者さんもいらっしゃるのです。
60代後半の男性でしたが、初回の問診のときでさえ震えて話されるほどの歯科恐怖症で、椅子を倒して口の中を拝見するときにも、不安で唇が震えていました。
恐怖のあまり泣き叫んだり、急に動いたりすると大変危険です。もちろん、それを患者さんも頭では理解しています。
しかし、自分で抑制できない状態になってしまい、冷静になったあとは恥ずかしさと自責の念に駆られて通院できなくなってしまう……という方もいらっしゃいます。
そういう方のために前向きで穏やかな解決方法があります。前回の記事でもお話しした「静脈内鎮静法」(IntravenousSedation=IVS)です。親知らずの抜歯やその他の外科的な処置を行うときにリラックスして受けていただくための手段として「究極の無痛治療」「リラックス治療法」として世に広まってきています。
「笑気吸入鎮静法」というものもありますが、IVSの方がはるかに確実で安定した鎮静状態が得られます。
IVSは治療時のイヤな記憶が残らない健忘効果もあるのが大きな利点です。
ただ、薬の効き具合を正しく把握して観察するために、呼吸不全などで酸素が体内に運ばれなくなると低下する動脈血酸素飽和度と心拍数、血圧、心電図をモニタリングできる設備が必須になります。
冒頭で紹介した患者さんがこの方法を希望され、それで治療を進めたところ、まったく震えることなく穏やかに完了しました。
「今日は終わりです」と声をかけると「え!」と驚き、大変うれしそうに笑われました。僕は「今、折り返しましたよ」「あとは、縫って終わりですよ」などの声かけはしていたのですが、患者さんは薬の健忘効果ですべて忘れていたのでした。
(構成=小澤美佳)
歯の疑問 ずばり解決!