爪の水虫放置で体のあちこちにカビ…転倒・骨折リスクも大

夏が来る前に治そう
夏が来る前に治そう(C)日刊ゲンダイ

 足の爪が白っぽくなっている人は足の爪に水虫菌がすみ着いている疑いがある。医学的には「爪白癬」といわれる爪水虫、一般的な皮膚の水虫よりも厄介な病気だ。家族にうつして恨まれる前に治療を開始すべき。

 爪水虫の症状は、「爪が白や黄色に濁る」「爪が厚くなる」「爪がボロボロになる」などだ。

「足の指の間にできる足白癬はかゆみなどの自覚症状がありますが、爪白癬は初期のうちは自覚症状がありません。そのため、爪白癬に感染していることになかなか気が付かない人が多いのです。しかしながら、自覚症状はなくとも爪水虫の早期発見・早期治療は非常に重要です」

 こう指摘するのは、埼玉医科大学総合医療センター皮膚科教授の福田知雄医師だ。早期発見・早期治療が重要な理由は主に3つある。

 まず、足の水虫と同様に、爪水虫も感染病であること。新型コロナウイルスではないが、自分が感染していれば、周囲にうつす可能性が高い。

 次に、爪水虫は爪にガードされているため治りにくい。爪水虫を放っておくと、足水虫が治っても水虫菌は足にまだすみ着いているため、足水虫を何度でも再発する。

 しかも感染するのは足だけではない。全身の皮膚にも感染。背中やお尻などに皮疹ができることがある。水虫菌はカビなので、体のあちこちにカビが生えてくるのだ。

 さらに、爪白癬の症状が進行すると、爪が変形し痛みが生じる。

「体を支えることが難しくなり、特に高齢者では転倒しやすくなります。糖尿病患者では爪白癬の2次感染で足の壊疽を起こし、切断を招くこともあります。これは生命予後に関わります」(福田医師=以下同)

■足の指にできる水虫の薬は効かない

 爪水虫の治療は、足水虫と同じようにはいかない。塗り薬と飲み薬があり、塗り薬は足水虫で使うものとは種類が別。また、足水虫は正しく使えば市販の塗り薬でも完治に持っていけるが、爪水虫では不可能だ。

「塗り薬にしろ、飲み薬にしろ、爪白癬は病院で薬を処方してもらわなければなりません。一部の爪白癬を除き、飲み薬の方が塗り薬より効き目が強いのは間違いありません。皮膚科医であれば、塗り薬と飲み薬のどちらでも選べる場合は、飲み薬を選ぶでしょう」

 飲み薬は現在3種類。2018年承認の最新の飲み薬「ホスラブコナゾール L―リシンエタノール付加物」は12週間服用する。「テルビナフィン」は24週間、最も古い「イトラコナゾール」は1週間内服し、3週間休薬を3サイクル繰り返す。対象が異なるので正確な比較はできないが、臨床試験で「ホスラブコナゾール L―リシンエタノール付加物」で治療した人が1年後に60%弱完治しているのに対し、塗り薬では1年間塗り続けても完治する人が20%を切る。塗り薬で完治させるには、最低でも1年、人によっては2年以上使い続けなければならない。飲み薬は長くても6カ月なので、治療終了までの期間の差は大きい。

「副作用の点から見ると、飲み薬は肝障害などの副作用があるため、塗り薬の方が選びやすいと言えます。しかし、3つの飲み薬のうち最も適切なものを選び、医師の管理の下に服用すれば、高齢者でも大きな心配をすることなく治療を受けることができます」

 整形外科や内科の医師にありがちで、また皮膚科医も陥りやすいのが、「処方のハードルが低いからと、爪水虫に対して塗り薬を優先的に処方し、かつ漫然と外用させ続けること」――。 早く治療を終えたければ、適切な治療ができる皮膚科医を受診すべきだろう。

 なお、前述の通り、爪水虫と足水虫では効く薬が違う。足水虫で処方されている塗り薬を爪にも塗っても、爪水虫は治らない。

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