その歯医者さんが患者さんの立場で考えてくれるのであれば、遠くても通院するべきです。
患者さんにはさまざまな事情や価値観があります。ご質問の方のように遠方から通われる場合もありますし、小さなお子さまがいらっしゃる方、付き添いが必要な方、自分の歯にこだわりが強い方……挙げていけばキリがないほどです。
そして、コストの問題があります。多くの方は実際にかかる治療費だけをコストだと捉えていますが、僕は、来院回数や通院にかかった総時間など、治療に関係するすべてを合わせたものが本当のコストだと考えています。
また、一時的に「痛みを取る」とか「噛める歯をつくる」のであれば、今の時代それほど難しくないかもしれません。しかし、これまでお話ししてきた通り、歯は人生や命そのものを左右する大事な器官であり機能です。その場しのぎではなく、長い目で捉える必要があります。
僕の患者さんの中には北海道や仙台などから通われている方々がいらっしゃいます。そういう場合、治療時間を長くして通院回数を減らす工夫をしたり、高齢の方にはダメージを最小限に収める治療計画を立てるなど臨機応変に対応しています。
「患者さんの立場に立って“本当のコスト”を踏まえた治療計画を提案してくれるかどうか」を判断ポイントにすると、自分にとってベストな歯科医師か否かが見えてくるはずです。
今回で当連載は最終回となります。常にお伝えしたかったのは「自分に合うベストな歯科医師を見つけて、最良の治療を受け、充実した人生を送っていただきたい」ということです。腕が良くて良心的な歯科医師はたくさんいます。本気で探せば必ず見つかります。
僕は今月から最先端歯科医療研究の分野にも参加して、研鑽(けんさん)を積むことになりました。さらに深い知識と技術を蓄え、皆さまのお役に立てるお話ができる日を迎えられるよう精進いたします。 =おわり
(構成=小澤美佳)
歯の疑問 ずばり解決!