遺伝子治療薬はここまで来ている

「siRNA」を使った薬剤に新型コロナ治療薬としての期待が

写真はイメージ
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 遺伝子治療薬は、病気の原因になっていることが明らかな遺伝子に対し、不足している場合は「補う」、過剰な場合には「抑える」ことによって病気の治療を行うものです。

 それらを外部から「薬」として投与する方法で実施するため、遺伝子治療薬と呼ばれています。

 原因となる遺伝子(正確には遺伝子からつくられる健康を保つために必要なタンパク質)の単純な不足や過剰だけでなく、場合によっては異常な遺伝子が過剰に発現することで、正常な遺伝子が不足しているケースもあります。いずれにせよ遺伝子治療は、遺伝子の「不足」と「過剰」に対応するのですが、これらの遺伝子の制御技術は実験室でこれまでに行われてきた実験技術が多く、それが遺伝子治療薬の製剤化に生かされています。

 遺伝子発現を抑制する技術のひとつに「RNA干渉」(RNAi)というものがあります。RNAiに使われる「siRNA」「shRNA」「miRNA」は標的となる遺伝子(RNA)に結合し、遺伝子を切断します。それで悪さをしている遺伝子を抑制するというものです。

 中でも、siRNAは標的となる遺伝子に対する特異度が高い。つまり、狙った遺伝子だけを抑制して他の遺伝子には影響しないため、遺伝子治療薬としてはもってこいといえるものです。いま、このsiRNAが、新型コロナウイルスの治療薬候補として期待されています。

 実際、すでにsiRNAが薬として使われている例もあります。「トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチー」という病気に対する新しい治療薬として、「オンパットロ」(パチシラン)が2019年9月に発売されました。世界で初めてとなるsiRNA薬です。

 次回はこのオンパットロについて詳しく解説します。

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神崎浩孝

神崎浩孝

1980年、岡山県生まれ。岡山県立岡山一宮高校、岡山大学薬学部、岡山大学大学院医歯薬学総合研究科卒。米ロサンゼルスの「Cedars-Sinai Medical Center」勤務を経て、2013年に岡山大学病院薬剤部に着任。患者の気持ちに寄り添う医療、根拠に基づく医療の推進に臨床と研究の両面からアプローチしている。

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