病気を近づけない体のメンテナンス

血管<下>高血圧症で気をつけるべき塩分・野菜・運動

まずは野菜を先にいっぱい食べる
まずは野菜を先にいっぱい食べる

 血圧が高いと血管壁を傷つけ、動脈硬化を進行させる。高血圧の人には「減塩」が勧められている。それには2つの理由がある。塩分を多く取って血液中にナトリウムが増えると、レニンやアンジオテンシンなどの血圧を上昇させるホルモンの分泌が高まる。それと血液中に増えたナトリウムを薄めようとして、血液中に水分が引き込まれて血液量が増え、それを押し出すために血圧が上昇するからだ。

 1日の食塩の摂取目標は、高血圧および慢性腎臓病の重症化予防を目的とした量として、厚労省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では「6グラム未満」としている。日本高血圧学会が推奨する量も同じだ。しかし、実際にどれだけ食塩を取っているか分からない。また、血管に良いとされる栄養素や食品はたくさんあるが、それをいちいち意識して食べるのも面倒だ。何かいい食事方法はないのか。国際血管健康学会(ISVH)理事で「信濃坂クリニック」(東京都新宿区)の高沢謙二院長(東京医科大学名誉教授)が言う。

「血管を若返らせる食事のコツは『野菜優先・野菜中心食』です。厚労省が推奨する1日の野菜摂取量は350グラムですが、お椀に盛ると2杯分くらいになります。その量を毎食に分けて、食事の最初に食べるのです。『野菜を、先に、いっぱい食べる』が合言葉です。この食事法を毎日続けていれば、血圧だけでなく血糖、コレステロールなど、血管を傷める危険因子のすべての数値が下がります」

 野菜を先に食べると、お腹がすいているのでドレッシングを多くかけたり、濃い味にしなくてもおいしくたくさん食べることができる。また、野菜にはナトリウムの排出を促してくれるカリウムが豊富に含まれている。

 食後血糖値の急上昇は血管を傷つけるが、野菜を先に食べれば食物繊維が糖質の吸収を遅らせるので、血糖値の上昇が緩やかになる。それに血液中のコレステロールの8割は肝臓で作られ、摂取カロリーが多いと上昇する。野菜を先にいっぱい食べれば、食事全体の摂取カロリーが抑えられるわけだ。

 血管を若返らせるには、小まめに体を動かすことも良い。全身の血流が良くなれば、血管への負担も減るからだ。しかし、嫌々「運動しなければ」とストレスに感じるようなら、かえって良くない。そこで高沢院長が考案したのが、自宅で簡単にできる「血管若返り体操」。3種類のポーズがあり、毎日朝晩2回、各1セットずつ行うといい。

■基本のポーズ

①体の力を抜いて、自然に立つ。両足の幅は、かかとを上げやすい間隔にする。②両足のかかとを同時に上げ下げする。これを1セットとして10回行う。

■いばったポーズ

①体の前で腕を組む。腕は体についてもOK。②基本ポーズ(かかとの上げ下げ)と同時に、両肩を上げ下げする。これを1セット10回行う。

■こまったポーズ

①両手を体の横に開いて置き、両肘を後ろに引く。手のひらを前方に向ける。②基本ポーズ(かかとの上げ下げ)と一緒に両肩を上げ下げする。これを1セット10回行う。

「ふくらはぎは第2の心臓といわれます。『基本ポーズ』は、そのふくらはぎの筋肉の収縮によるポンプ作用で下半身の血流をアップさせます。『いばったポーズ』はお腹と胸の血流をアップさせます。腕ではなく、肩を上げ下げするように意識してください。『こまったポーズ』は、背中の血流をアップさせます。これも肩を上げ下げするように意識してください。この3つの体操を行うことで全身の血流循環が良くなり、血管をほぐすストレッチになるのです」

 血管を守る最大のポイントは、血管の中が脱水にならないようにすること。心筋梗塞や脳梗塞などの血管事故を防ぐのに最も大切になる。喉が渇きを感じたときは、すぐに水分を補給。減塩が高血圧予防に大切なことを述べたが、これから夏に向かって注意して欲しいことがある。

「炎天下のゴルフで大量に汗をかいたら必ず塩分も一緒に取ってください。塩分のない飲料で水だけ補給をしていると、汗で塩分が失われていくのと同時に血液が薄まります。血液の濃度が低下すると、脳は十分に水分があると勘違いして、喉の渇きが起こらなくなってしまいます。そのため熱中症で倒れてしまう人が多いのです」

「喉が渇いたら水を飲め、汗をかいたら塩も取れ」を肝に銘じておこう。

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