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新型コロナウイルス対策に使える 症状別「漢方薬」リスト

(C)日刊ゲンダイ

 新型コロナウイルスの治療薬をめぐって、議論に上がるのは西洋医学によるものばかりだが、まだ治療薬として確立したものはない。一方、日本ではさほど注目されていないが、中国のコロナ治療で東洋医学(漢方薬)が一定の効果を認められている。

 東洋医学では新型コロナウイルスに対してどのように考えているのか。日本中医学会の評議員兼松浦薬業講師を務める「中醫堂」の関口善太氏に聞いた。

 ◇  ◇  ◇

「東洋医学の考え方では人体を傷害するもののひとつに病邪(病の邪気)というものがあります。この病邪に対抗して、人体の防御に関わるものを正気といいます。コロナウイルスなどの発病は、邪気と正気の攻防の結果、邪気が正気に勝ったときに起こるのです。今回、プロ野球選手をはじめとして若い体力のあるアスリートでも感染していることから、このウイルスは相当強力な邪気で、感染初期は、正気の増強(免疫の強化)を考えるのではなく、まず邪気の除去を優先しなければならないと考えます」

 東洋医学では、邪気は「傷寒病」と「温病」に分けられる。

 前者は、初期に寒けを強く感じる感冒やウイルス性疾患を総称したもの。

 後者は、熱毒性の強い感冒やウイルス性疾患を総称したもので、高熱が出るのが特徴だ。

コロナ用の漢方薬をつくる中国の施設
コロナ用の漢方薬をつくる中国の施設(C)新華社/共同通信イメージズ
初期なら「銀翹散」

「今回の新型コロナは、中医学(中国漢方)では温病に属すと考えます。SARSも同様で、当時広州の大学病院では温病治療で大きな成果をあげています」

 温病の初期治療には発汗と解毒を行う。その代表が「銀翹散」で、ほかに「銀翹解毒散」や「金羚感冒散」などの商品名で販売されている。これらは、かぜのような症状(コロナウイルスの初期症状)が出始めたら服用するといい。

「日本でかぜの漢方薬として周知されている葛根湯は、傷寒病の処方であって解毒の作用を有しないため温病には効きません」

「銀翹散」の服用の仕方は?

「常に1包携帯して、咽喉痛、頭痛、熱感など感冒様の症状や味覚異常を自覚したら、できるだけ早く飲んでください。その後、症状がなくなれば服用する必要はありません。しかし、症状が継続するようであれば、1日3回服用してください。最初の“異変”段階で服用し、ウイルスを減弱化できていると、重篤化のリスクは少なくなるでしょう」

 ただし服用しても症状が続くようであれば専門機関に相談してみよう。

 もし咳が出始めたら、銀翹散から、「麻杏甘石湯」または「五虎湯」に切り替える。

「さらに高熱が続くようであれば『バンラン根』を併せて服用し、解毒と解熱を強化します。また、咳と下痢の両方が出ている人は、『麻杏甘石湯』と『五苓散』の組み合わせもいいでしょう」

 今回のコロナウイルスは食欲不振や下痢を誘発するともいわれる。その症状が見られたら「カッ香正気散」と「黄連解毒湯」を併せて服用してもいい。

 ほかに、ぜんそくなどの基礎疾患がある人は、事前に正気を補足しておくと重篤化のリスクが減る。

 体調に何も異変がないうちなら、予防薬として「玉屏風散」がある。

 初期症状を改善する銀翹散などは店舗や通販で購入してもいいが、中間症状以上は持病などを考えて、専門の漢方薬局に電話で問い合わせてから服用するのが安心だ。

 中国発祥とされるウイルスに、中国の漢方を使うのは理にかなっている気もする。

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