在宅ワークの夫が糖尿病…リモート生活で高まる健康リスク

漫画家のマルコさん
漫画家のマルコさん(C)日刊ゲンダイ

 家族にひどい咳が続いていたら…今の時期なら真っ先に新型コロナウイルス感染による肺炎などを疑うだろう。しかし、このようなケースもあるので要注意だ。
 
うちの夫が糖尿病になっちゃった! ズボラ夫が血糖値を下げた方法」(日本実業出版)を描いた漫画家のマルコさんの場合、夫のKタローさんが咳き込んでいるので病院に連れて行ったところ、風邪薬を処方された。

 しかしそれでも咳が治らないため、人間ドッグで検査をしたところ、糖尿病だと判明した。

 糖尿病はすい臓から出るインスリンというホルモンの作用が不足して血糖値が下がりづらい状態が続く病気で、免疫力も下がってしまう。

 そして一度発症すると治らないのである。

 Kタローさんはもともとインドア派だったことに加え、脱サラしてからは家で座りっぱなしで仕事をするようになったという。さらには子育て中ということもあり、昼夜逆転して不規則な食生活を続けた結果、糖尿病を発症してしまった。

 しかしこれは他人事ではない。敏感な読者はお気づきだろう。新型コロナウイルス感染対策のため、いまや多くの人が外出自粛をして家にこもり、仕事を続ける生活スタイルになってきているからだ。糖尿病リスクは目の前にある。

 糖尿病は新型コロナウイルスが感染した場合、悪化リスクを高めるともいわれるので今の時期、特に要注意でもある病気。そこでマルコさんに、外出自粛要請下での健康リスク対策について話を聞いた。

■在宅ワークで自分で時間をキッチリ決めるのは難しい

 ――なぜKタローさんは咳が出続けたのでしょうか。

「もう4年前の話ですが、最初はただの風邪だったのが、当時の夫は血糖値が高い状態が続いて免疫力が落ちていたので悪化していき、咳が止まらなくなっていたんですね」

 ――そもそも糖尿病とはどういう病気なのですか。

「これは夫の入院中に一緒に勉強したことですが、糖尿病と聞いたら、太っているとか食べ過ぎとか不摂生の人だけがなるというイメージが強いですよね。だけど糖尿病は大きく分けるとⅠ型とⅡ型があり、原因がよくわかっていないⅠ型に対し、糖尿病患者の約95%といわれるⅡ型糖尿病は遺伝、運動不足、暴飲暴食、不規則な生活習慣、ストレス、年齢などいろいろな要因がからんで発症します。夫の場合もⅡ型糖尿病で、家で仕事をするようになってから、健康診断も受けていなかったので、不規則な生活や運動不足から高血糖が放置され続けて発症したと思います」

 ――政府が「人との接触を8割減らせ」と訴え、テレワークやリモートワークと在宅勤務が多くなっています。Kタローさんが糖尿病になったときの生活と似てきている人も多そうですね。

「私のブログでも最近書いているのですが、それはとても思います。会社勤めをしていると自然と規則正しい生活になるものですよね。だけど在宅で仕事をして自分で時間をキッチリ決めることってけっこう難しいんです。特に家にお子さんがいらっしゃったりすると、昼間に集中できないので夜型になったりとか。それもあってうちの夫も深夜に仕事をすることが多くなっていました。深夜に仕事をするとお腹が空くので間食します。そういう不規則な生活が悪循環になっていくのですが、結局、病気になるまでそれがわかりませんでした」

 ――どのような生活スタイルがよいのでしょうか。

「決まった時間に食事をとることが血糖コントロールには大事です。不規則な食事をしていると間食も増えます。そうすると一日に食べる量も増えてしまいます。規則正しい生活がともかく大切で、睡眠時間もしっかり確保して、1日1回は少しでも運動したほうがいいです。今なら、人の少ない時間帯に散歩すると決めるとか、自宅でできるエアロバイクがおすすめです。あとはストレスを溜め込まないようにしたほうがいいので、自分なりのストレス解消法をみつけたいですね」

 ――食事についてですが、最近、スーパーマーケットなどでは強力粉やドライイーストが売り切れになったりしています。主食になるパンを作ることが流行っているからでしょうが、主食で使われる小麦粉やお米の摂取について注意点はありますか。

「夫がよく食べる主食はオートミールです。食物繊維が豊富でGI値(糖質の吸収の速さ)が低いからです。雑穀米や玄米も食べています。GI値的にはフランスパンは要注意ですね。パンなら、小麦粉のかわりにふすま粉を使ったものがおすすめです。ふすま粉にはミネラルや食物繊維も豊富に含まれているので、健康維持にも効果的です。ネットショッピングでかんたんに購入できます。最近はコンビニでもブランパンという名前でよく売られています」

 ふすま粉とは小麦粒の外皮や胚芽など表皮を使った粉のこと。小麦の表皮部分は小麦ブランと呼ばれており、強力粉の小麦粉より大幅に低糖質な粉になる。

「また、パンを食べるならたっぷりの野菜を挟んだサンドイッチもおすすめです。野菜やお肉や卵など、何かをパンにはさんで食べたほうがボリュームも出ます。野菜には食物繊維が多く入っているので、糖質の吸収がゆっくりになって、血糖値が上がりにくくなります。夫の食事の基本はベジファーストで、最初に野菜や海藻類を食べ、肉や魚などのタンパク質、炭水化物の順番に食べます。最後にパンといえばコーヒーですが、コーヒーはポリフェノールが多いので血管にもよく、血糖値の上昇を抑え、糖尿病予防に役立つといわれています。砂糖やミルクをたくさん入れると逆効果なので注意してほしいですが」

 ――外食と家食は良し悪しもありますね。

「家で食事をつくると糖質量や脂質量が調整しやすいし、野菜を多く摂ることができます。外食だと比較的、野菜の量が少なくなりますし塩分も高めになってしまい、どれくらいの糖質や脂質が入っているか明確ではありません。ただ一番大事なのは長く続けることなので、家の食事に飽きたら外食も楽しんでいます。その場合はオムライスや牛丼、ラーメンなどの炭水化物中心のものではなく、定食など野菜やおかずの多いものを選んで食べるようにしています。ただ、今の時期はさすがに外食は控えています」

 ――健康だと思っている人も気をつけたほうがいいですね。

「糖尿病だけでなく、すべての生活習慣病において食事と運動を気を付けることは大事だと思います。病気の原因はつながっていますよね。私も夫と同じ生活をするようになって、以前よりも健康になったと思います。40歳超えていますが、いま妊娠8カ月でとても順調です。私ってどんなに元気なのと思います(笑)」

 外出自粛要請が終わっても、テレワークやリモートワークは増えていくだろう。その反面、自宅で仕事をするがゆえの健康リスクも潜んでいることには注意したほうがいいだろう。糖尿病リスクを下げる巣ごもり生活についてさらに詳しく知りたいなら、マルコさんの本をお読みいただきたい。

(取材・文=平井康嗣/日刊ゲンダイ)

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