「顔色が少し青いけど、貧血気味じゃない?」
家族間で、こんな会話を交わしたことがあるでしょうか。
「貧血」は、血球数(血液に浮遊している赤血球、白血球、血小板)の減少や、とくに赤血球中のヘモグロビン(血色素)の量が減少すると、血液を運ぶ酸素が十分に供給されなくなり、貧血という症状を招きます。
世界保健機関(WHO)は、貧血の基準値を「ヘモグロビン(血色素)が男性13g/デシリットル未満、女性12g/デシリットル未満」と定義しています。この定義から推測すると、65歳以上の日本人10%ぐらいが貧血に当てはまり、85歳以上の高齢なら約20%と高くなります。
貧血の原因となる赤血球の増減は、エリスロポエチンというホルモン(EPO=赤血球の産生を促進する造血因子のひとつ)による骨髄内での赤血球製造コントロールで左右されます。EPOは低酸素や貧血が刺激となり、腎臓で作られます。
赤血球の産生は、EPOだけでは足りません。主に鉄、ビタミンB12(鉄族元素、コバルトを含むビタミンの総称)、さらに葉酸(水溶性のビタミンB群)といった基質類の十分な供給が必要です。
では、健康体の人がなぜ貧血を招いてしまうのでしょうか。その仕組みについて詳しく説明しましょう。
原因は大きく分けて2つあります。1つは、失血(大量の出血)です。多くの場合は、徐々に繰り返し発生する出血で、消化器や尿路の異常による出血や生理出血が典型的です。また、交通事故などで外傷を受けたときの急性大量出血では命の危険があります。
2つ目は、赤血球の産生不足または赤血球の大量破壊です。貧血の中でも鉄分の不足による「鉄欠乏性貧血」が最も多いのですが、ビタミンB12や葉酸の不足によるDNA(生体細胞中に存在する遺伝子の本体)合成障害が原因の悪性貧血もよく見られます。赤血球を作るのに、ビタミンC、リボフラビン(ビタミンB2とも言われる水溶性のビタミン)、銅も、微量ながら必要です。
また、慢性消耗性疾患(がんなどが原因で痩せるなど体が消耗状態になる)も、赤血球の産生に影響する場合があります。それに、白血病やリンパ腫、他の部位から転移したがんなどにより脊髄浸潤があると、血を産生する骨髄のスペースが置き換えられてしまう結果、赤血球が十分に作られなくなります。
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