病気を近づけない体のメンテナンス

自律神経<上>骨格のゆがみリセットには「12秒呼吸法」を

骨格のゆがみが自律神経の乱れを生む
骨格のゆがみが自律神経の乱れを生む

 自分の意思とは関係なく、自動的に全身の器官の活動をコントロールしている「自律神経」。意識しなくても呼吸が続いたり、心臓が動いたり、汗をかいたり、体温が変化したり、胃腸が消化活動を行ったりするのは、すべて自律神経の働きによるものだ。

 自律神経には「交感神経」と「副交感神経」の2種類がある。交感神経は、興奮や緊張、運動したときに優位に働く、いわゆる「戦闘モード」の神経。一方、副交感神経は、安静時や寝ているときに優位に働く、「リラックスモード」の神経だ。

 交感神経と副交感神経は、その場の状況に応じてどちらかが優位になり、シーソーのようにバランスをとりながら働いている。しかし、この自律神経の働きが正常に機能しなくなると、全身にさまざまな不調(自律神経失調症)が起こるのだ。

 自律神経失調症によって表れる不調は、検査をしても特定の病気に当てはまらない不定愁訴。頭痛、めまい、疲労感、低血圧や頻脈、動悸、胃痛や吐き気、下痢や便秘など多岐にわたる。

 しかし、原因がはっきり分からないことで「ストレスのせい」と、心療内科や精神科に追いやられてしまうのが実情だ。

 自律神経の乱れを整える、何かいい方法はないのか。自律神経失調症外来を設ける「せたがや内科・神経内科クリニック」(東京都世田谷区)の久手堅司院長が言う。

「自律神経が乱れる原因には、精神的・身体的・環境的なさまざまなストレスや不規則な生活習慣などが大きく関わってきます。その要因の中で、私が特に重視しているのは『骨格のゆがみ』です。自律神経失調症で受診する患者さんの多くは、姿勢が悪く、診察室に入ってきて数歩で骨格のゆがみに気づきます。そのような患者さんを診ていく中で大きな効果が出たのが、全身の骨格をベースに自律神経を整えていく方法でした」

 なぜ、骨格がゆがんでいる(姿勢が悪い)と自律神経が乱れるのか。それは自律神経が走っている場所が関係する。自律神経は、脳の視床下部から始まり、「脊髄」を通って全身の各器官につながっている。脊髄は「脊椎」というS字に近いカーブを保っている骨のトンネル(背骨)の中を通っている。しかし、姿勢が悪くカーブが変形したり、ずれたりすると中の脊髄が圧迫され、自律神経が正常な働きをしづらくなるという。

 さらに、骨格がゆがみ、姿勢が悪いと、肺がつぶされ、呼吸が浅く短くなってしまう。すると体に十分な酸素が行き渡らないので、それだけで化学的なストレス要因になる。また、浅く短い呼吸をしているときは交感神経が優位になっている状態。日常的に浅く短い呼吸を続けていると、常に交感神経優位となり、自律神経のバランスが乱れる原因になるのだ。

 まず、立った状態の理想的な姿勢は、正面から見たときに「縦の軸」(背骨のライン)と「横の軸」(耳のライン)が両方真っすぐになっている状態という。この理想的な姿勢を保つために、習慣にするといい骨格にアプローチする方法があるので紹介する。

①骨格をリセットさせる「12秒呼吸法」

 呼吸と骨格は連動しているので、一時的にも正しい呼吸をすれば一時的に正しい姿勢に戻る。

【胸式呼吸】

 胸下の両脇に手を添える。3秒くらいかけて、肋骨が上に上がるように鼻から軽く息を吸う。3秒くらい止めてから、6秒くらいかけて肋骨を下に下げるように口から息を吐き切る。

【腹式呼吸】

 お腹に手を添える。3秒くらいかけて、お腹が膨らむように鼻から軽く息を吸う。3秒くらい止めてから、6秒くらいかけて背中とお腹がくっつくイメージで口から息を吐き切る。胸式呼吸は交感神経を優位に、腹式呼吸は副交感神経を優位にする効果があるので、集中したいときは胸式、リラックスしたいときは腹式と、使い分けるといいという。

②縦の軸を整える「首伸ばし法」

 頭だけを前に出して10秒キープ。顎だけが出たり、肩や上半身が前に出たりしないように注意。両手の親指と人さし指で顎先を持ち、後ろへ押し戻す。頭と水平に押し合って10秒キープする。

③横の軸を整える「耳伸ばし法」

 両耳の耳たぶの少し上を持ち、横に水平に引っ張り、5~10秒キープしてから元に戻す。

「12秒呼吸法は、やるたびに骨格がリセットされるので、1日に何回もやってください。首伸ばし法や耳伸ばし法は、1日に2~3回を目安に行うといいでしょう」

 次回は、自律神経を整える睡眠法や入浴法などを紹介してもらう。

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