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新型コロナで問題に トリアージで助かる命、助からない命

重症の肺炎患者の治療に使われるECMO(エクモ)/
重症の肺炎患者の治療に使われるECMO(エクモ)/(C)共同通信社

 最近「トリアージ」という言葉を耳にする。日本語では「識別救急」。患者の治療の順番、治療方法などの優先順位を選別することをいう。新型コロナウイルス感染拡大で医療現場ではこのトリアージ問題が深刻だ。

 たとえば、ある医療施設に人工呼吸器が2台しかないとする。そこに人工呼吸器を必要とする患者が3人いた場合、「人工呼吸器をどう配分するか」が浮上する。①救命の可能性の高い人優先②若い人優先③使用開始時期の順番優先④患者の(譲る)意思などが想定されるが、そうした「トリアージ=命の選別」を誰が行うか。非常時において医療従事者は、倫理的葛藤を迫られる。

 その人工呼吸器だが、現在、日本の医療施設には約2万2000台あるといわれている。感染の動向次第では、絶対数の不足も想定される。実際、感染者数、死者数ともに世界でもっとも多い米国では、このまま推移すれば96万人が人工呼吸器が必要になるという推計もある(米国集中治療学会)。だが、現段階では米国内に約20万台しかないという。日本も対岸の火事ではすまされない。トリアージで助かる命も助からないことがあるかもしれない。

 ちなみに、アベノマスクの当初の予算は466億円。現在でも10%以下の配布にとどまっているが、「たとえば」の話として、この予算を人工呼吸器の整備に充てたとしよう。すると、約4700台買える。トリアージの局面が大幅に減少することは間違いない。

 さらに「たとえば」だが、秘書手当、交通費などを含めた国会議員1人当たりにかかる費用は年間6000万~7000万円とされる。国会議員を10人減らせば、毎年60台から70台買える。いまの政治の優先順位、このままでいいのだろうか……。

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