病気を近づけない体のメンテナンス

自律神経<下>体調不良はPC・スマホ作業中の姿勢が原因

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 「交感神経」と「副交感神経」が、その場の状況に応じてどちらかが優位になり、シーソーのようにバランスを取りながら働いている「自律神経」。交感神経は、興奮や緊張、仕事などで集中しているときに優位に働く。副交感神経は、安静時や睡眠中などリラックスしているときに優位に働く。

 この自律神経の働きが正常に機能しなくなると、頭痛、目まい、疲労感、動悸など、全身にさまざまな不調(原因がはっきりしない場合は、自律神経失調症と診断されることも多い)が起こる。

 自律神経が乱れる原因は、心身のさまざまなストレスが関係するが、姿勢の悪さも要因になる。姿勢が悪いと自律神経が通る脊髄が圧迫されるからだ。自律神経失調症外来を設ける「せたがや内科・神経内科」(東京都世田谷区)の久手堅司院長が言う。

「頭部の重さは体重の8~10%近くもあり、体重70キロであれば7キロくらいです。頭部は安定した位置にないと、さらに重力が加わります。頭部が30度前に出ると3倍近くの約20キロの重さになります。いまはパソコンやスマホの操作で画面をのぞき込むように前かがみになり、首が前に出て姿勢が崩れた状態で長時間過ごしている人が多くいます。首、肩、脊椎に負担をかけて、自律神経が乱れやすいので要注意です」

 パソコン作業時に、手首から肘までが真っすぐ机の上に乗っていたら要注意。この姿勢だと、手首から肘までが机に固定されることになり、肩はより内巻きになり、頭部もより前方に出て、かなり前のめりの姿勢になってしまうからだ。

■体に良いマウスとは

 椅子に座っているときの姿勢は、骨盤がしっかり立っており、背骨のS字カーブが保たれ、その上に頭部が乗っているのが正しい状態。この姿勢が保てるように、モニターの高さや角度を調節することがポイントになる。

 また、操作に使うマウスの選び方も大切だ。実は、手首にも正しい姿勢と同じく、負担のかからない「ニュートラルな位置」があるからだ。テーブルに手を置いてみたとき、ちょうどチョップをしているような、小指側がテーブルに接して、親指側が上にある状態がニュートラルになる。

 パソコンを操作するときは、マウスを持ったりキーボードに乗せたりするので、手の甲側が見えるように手首をひねる「回内」の状態になる。手首が回内すると、前腕と肘も回内する。すると自然に肩も内巻きになり、首も前に出やすくなってしまうのだ。

「対策として、マウスは縦型に近い形状の『エルゴノミクスマウス』を使うといいでしょう。回内が少なくてすむので、手首をはじめとした骨格への負担を軽減してくれます。また、私は左手側にもマウスを置いています。できるだけ左右交互にマウスを使って、右手の負担を減らすためです」

 パソコン操作は座り姿勢はもちろん、使用時間も注意が必要。緊張状態で仕事し続けると、交感神経が過度に優位になり、自律神経に大きな悪影響を及ぼしてしまう。できれば30分に1回、長くても1時間に1回は画面から目を離し、立ち上がって軽く体を動かすようにしよう。

 パソコン操作は仕事上、仕方がないが、より使用時間に気をつけたいのはスマホだ。スマホは手で持って操作するので、より顔を近づけて画面をのぞき込むような前かがみ姿勢になるからだ。

「スマホは想像以上に骨格に大きな負担をかけます。連続使用時間は30分以内、一日の使用時間は2時間以内に抑えるのがいいでしょう。持ち方を変える(手首をニュートラルポジションにする)だけでも、だいぶ負担は軽減されます」

 自律神経を整えるのには、質のいい睡眠が重要になる。逆に、自律神経のバランスが乱れていると、交感神経と副交感神経の切り替えがうまくいかず、睡眠の質が悪い「不眠」や「過眠」の原因になる。

 まず、質のいい睡眠に入るには、交感神経優位から副交感神経優位にする必要がある。そのリラックスモードに導く効果があるのが入浴だ。また、睡眠は深部体温が下がったときに深い眠りに就きやすい。そのためには就寝の90分~2時間くらい前に、38~40度のお湯に15~20分ほど漬かるのがいい。

「睡眠は深い眠りのノンレム睡眠と浅い眠りのレム睡眠を、だいたい90分ワンセットで繰り返しています。最も重要な睡眠は眠り始めの最初の90分になります。できるだけ4セット分(6時間)の睡眠を取れるように心がけてください」

 自律神経のバランスを保つためには、一日の仕事と休息のメリハリをつけることが大切という。

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