コロナ禍での熱中症対策

今夏は熱中症死者が増える可能性 新型コロナ超えの予想も

スペイン・グランカナリア島のビーチでマスクをつけ歩く女性
スペイン・グランカナリア島のビーチでマスクをつけ歩く女性(C)ロイター

 世界中の人がマスクをした状態で過ごすという、歴史上前例のない夏が間もなくやってくる。マスク着用時の呼吸における温度の上昇。さらに、外出自粛やリモートワークが続いたことによって、暑さに徐々に体が慣れる暑熱順化が十分でないことから、今年の夏は熱中症にかかる人が増加する可能性もある。

 総務省消防庁の統計によると、一昨年の2018年の夏には、7万1266人が熱中症で救急搬送され、うち138人が初診で死亡した。今年の救急搬送者と死亡者がどれくらいまで増えるかは予測不可能だが、場合によっては、新型コロナウイルスによる死亡者の756人(5月17日現在)に匹敵する可能性もある。まさに、真夏の脅威が近くやってくるのだが、そもそも、このように命を脅かす熱中症とは何なのだろうか?

「暑熱環境にあって、なんらかの体調不良や、いろいろな症状が出た場合、これはすべて熱中症の可能性があります。逆にいえば、寒い環境での体調不良は、決して熱中症とは言わないということですね」

 こう説明するのは、帝京大学医学部付属病院高度救命救急センター長で、同大医学部救急医学講座の三宅康史教授だ。環境省「熱中症予防声かけプロジェクト」の実行委員長も務める、熱中症の第一人者だ。

「熱中症で体調が悪くなる理由は主に2つ。まず1つは、体温が上がることによって、それを下げるために体は汗をかいて乾くときに気化熱で体が冷えるのですが、同時に体の表面の血管を拡張させて、放熱することで体が赤くなります。汗をかくことと、体の表面に血液がたまることで、脱水症状になり、大切な臓器に血液が行き渡らなくなる。これが理由の1つです。2つ目は、本来37度程度でいちばんよく働くように設定されている、脳、肝臓、腎臓などの臓器が、38度、39度、40度と高温になるにつれて、調子が悪くなっていく。この2つが熱中症の主な原因ですね」

 もちろん、夏場の体調不良がすべて熱中症だというわけではなく、病院に行ったらほかの病気が見つかったり、夏場のインフルエンザや、いまだったらコロナウイルスに感染しているということも考えられる。それを判別するためにも、家でひとりで耐えるのではなく、症状が出たら病院で受診することが大切だ。だが、もっとも大切なのは、暑い中で無理して外に出たりして、熱中症にならないことだろう。 (つづく)

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