第2波に備えよ 新型コロナを徹底検証

<8>カラオケ、ライブハウスのクラスターに惑わされない

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 暑くてたまらないのに、マスクを着けなければバスに乗るのもはばかられる世の中だ。これから夏に向けて熱中症リスクは高まる一方だというのに、マスクを強いる社会はおかしいのではないか。公衆衛生に詳しい岩室紳也医師に聞いた。

「WHO(世界保健機関)は以前、健康な人がマスクを着用すべきだと判断するには十分な証拠はないと主張していましたが、最近、公共の場での着用を推奨すると方針を変えました。これをもって、日本ではマスク論議は決着した、マスクをするのが当然、という風潮になっています。しかし、WHOもマスクをしただけで感染を抑えられると言っているわけではありません。私はマスクをしている多くの人は、新型コロナウイルスはどんな経路をたどって感染し、マスクはその防止にどのように役立っているか、まず理解することが大切だと考えています」

 感染経路は飛沫、エアロゾル、接触感染といわれる。新型コロナでよく語られるのは飛沫やエアロゾルだ。ライブハウスやカラオケで感染者が多数出ているからだ。大声で歌い、叫んだときに出る飛沫やエアロゾルが直接、他人の口や目や鼻から入ったといわんばかりだが、本当だろうか? そこで感染した人は歌っている人の真ん前にいて飛沫やエアロゾルを直接口や耳や鼻に浴びたのか? 浴びたとして飛沫やエアロゾルに人を感染させるだけのウイルス量が含まれていたのか? それが科学的に実証されたとしても、それを理由に、はるかに少ない音量で過ごす一般の人の日常生活に、全員マスクを強要されるだけの根拠になるのだろうか?

■感染経路の検証が先

 そもそも普段の生活で他人の口や目や鼻に向かって飛沫を飛ばす人はまずいないし、仮におしゃべりしたり、歌ったりすることで感染が起きたとしたら、より多くの人に感染場所となる口や鼻や目に強い免疫応答が生じて赤く腫れたり、熱を持ったり、こわばりが出るなどの異変が起こるはずだ。第一、それが本当なら、マスクが常態化する以前の2月、3月にはより多くの人が感染していたろう。

「科学的に考えてこの中で最もリスクが高いのは接触感染だと考えます。ただ、よく感染リスクの高い手で口や目や鼻を触るのが危ない、人は知らず知らずのうちにこうした場所を触るので、マスクがそれを予防する、などという話を聞きますが、本当でしょうか。幼い子供は別ですが、危ないと知って意識すればこういう場所を触ることはないでしょうし、感染しやすく重症化リスクのある中高齢者はなおさらです。実は、接触感染とは飛んだ飛沫やエアロゾルが落下して食べ物や飲み物、口にするお皿やコップなどに付着・蓄積したものを口にする『媒介物感染』のことなのに、それを理解している人が意外に少ないのです」

 実際、クラスターが発生した飲食店や夜の社交場はもちろん、ライブハウスやカラオケ店でも飲み物や食べ物が提供されていて、感染者は汚染された食器やコップを使い、シェアする食べ物にウイルスが付着し、それらが喉の粘膜に運ばれ感染を広げた可能性もある。

「灼熱の日本の夏において命を奪いかねないマスクの着用継続を主張するためには、まず日本のデータを基に感染経路を再検証し、マスクが日本社会において新型コロナウイルスを防ぐためにどれだけ役に立つかを早急に調べ直す必要があると思うのです」

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