専門医が教える パンツの中の秘密

意外に知らない陰毛の役目 ムダ毛だなんてとんでもない!

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 男性では「パイパン」という言葉を知っている人は多いでしょう。陰毛が生えていない女性の陰部を表す俗語です。マージャンで使われる何も書いてない白い牌(ぱい)が語源とされています。女性の場合は、英語の「衛生管理」などを意味する「ハイジーン」という言葉からつくられた「ハイジニーナ」という呼称の方が馴染みがあると思います。いずれにしても、最近は若い人(男性含め)を中心に陰毛を剃ったり、脱毛する人が増えているといわれます。処理する理由の多くは美容面(見た目)のようですが、果たして陰毛は本当に「ムダ毛」なのでしょうか。その解釈は人によって分かれるところでしょう。

 もともと人間は体毛に覆われていましたが、進化の過程で体毛がなくなり、主に頭髪、脇毛、陰毛が残りました。生えている以上は、何らかの意味(役割)があると考えるのが自然でしょう。

 しかし、その役割には諸説あり、どれも仮説になります。ただ、頭髪、脇毛、陰毛に共通するのは、体の中でも守るべき重要な部分に生えているということです。陰部は性行為のときに男女の肌がこすれ合う部分です。外部の刺激に対してクッションの役割を果たしているといわれます。

 それから毛には温度を一定に保つ保温の役割があるといわれます。また、脇毛や陰毛は縮れ毛になっていますが、これは空気がたまりやすく保温効果だけでなく、フェロモンのニオイをとどめておく効果があるという説もあります。

 汗が分泌される汗腺は「エクリン腺」と「アポクリン腺」の2種類があり、アポクリン腺は脇や陰部の毛穴に集中して存在します。アポクリン腺から出る汗は白く濁っていて、脂質やタンパク質などニオイのもととなる成分を多く含んでいます。この汗のニオイが異性を引きつけるフェロモンというわけです。

 女性の陰毛には、外的刺激のクッションになるだけでなく、細菌やウイルスを腟内に入りにくくして、感染症を予防する役割もあるとされています。さらに、女性の陰毛は性感帯のひとつという指摘もあります。

 とくに女性の陰部の盛り上がった恥丘(ちきゅう)は感覚神経が集中していて、下半身で一番反応が出やすい部分です。陰毛を愛撫すると、毛根部分にある「立毛筋」という小さな筋肉が収縮して陰毛が立ってくるのです。

 このような説からも陰毛には何らかの役割があるはずです。剃ると小さな傷から細菌などに感染するリスクもあります。陰毛の処理は、短く形を整える程度にしておくのがいいと思います。

尾上泰彦

尾上泰彦

性感染症専門医療機関「プライベートケアクリニック東京」院長。日大医学部卒。医学博士。日本性感染症学会(功労会員)、(財)性の健康医学財団(代議員)、厚生労働省エイズ対策研究事業「性感染症患者のHIV感染と行動のモニタリングに関する研究」共同研究者、川崎STI研究会代表世話人などを務め、日本の性感染症予防・治療を牽引している。著書も多く、近著に「性感染症 プライベートゾーンの怖い医学」(角川新書)がある。

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