和式生活が健康を作る

着物は冬温かく夏涼しい 3カ所の開口部で通気性に優れる

着物は通気性に優れているため意外と涼しい
着物は通気性に優れているため意外と涼しい(C)日刊ゲンダイ

 人が衣装を着用する理由のひとつに「体温調節」がある。当然、夏は軽装で、冬は厚着になるが、では、絹、木綿、麻など天然素材で仕立てる着物の体温調節は、どうだろうか。

 足元の裾が広がるために冬場は寒く、夏は暑いというイメージが強い。和服は季節にかなう衣装なのか。

 着物が現在の形になったのは江戸時代からで、同時代の気温は今よりも低かったといわれている。つまり着物は、寒い時代に発展して今の形になったもの。実際、冬場でも着物は、洋服よりも温かいといわれる。実際、それを実証した研究がある。「きもの健康学」の第一人者で京都大学医学部付属病院(呼吸器内科)の高橋裕子教授が行った研究だ。

 ヒトの体温は平均36・5度(脇の下で測った温度)。体温にはほかに「皮膚温」(皮膚表面の温度)があり、皮膚温は手足など7カ所の皮膚表面の温度を測って、平均値を割り出す。

 一定にした室内温度の環境で、「洋装(ビジネススーツ姿)」と、「着物姿」の2群に分け、平均皮膚温を比較した研究があるが、その結果は、洋装着用が32・14度、着物着用は32・47度で、数値はほとんど変わらない。

 ところが、着物の下に腰巻きや、パッチ(長いズロース)を着用すると、着物姿の平均皮膚温が、33・01度に上がったという。

 33度は人間が最も快適に感じる平均皮膚温だが、洋装だと、見栄えもあって洋装の下にパッチなど厚手の下着は着用しにくい。その点着物は、他の人から見えず、着用の工夫で、洋装よりもはるかに温かくなるといわれている。

 また、着物と温度の関係で、こんな実験もある。「快適と思う室温にできる実験用小部屋」を用意。被実験者に順次、入ってもらい、快適な温度調節をしてもらう。その結果、着物着用者たちは、快適な室温を、20~22度に設定したのに対し、洋服着用者は、少し高い24~26度に設定したという。着物着用者は、気温が低い状態でも快適と感じたのだ。

 では、夏場はどうか。日頃から着物を着ている人たちに「着物の暑さ対策」のアンケートも実施したところ、意外にも夏は保冷剤の使用や、長じゅばんをしないなど10項目に及ぶ対策の中で、トップは「汗取り下着」の着用だったという。

 着物は、開いた襟首や袖口、裾の3カ所に大きな開口部がある。そこから熱した体温が通り抜けていくという通気性に優れた衣装であるため、夏の浴衣も、衣文(首から襟を少し離した着方)の注意や、ゆったりとした着用に心がけたら、涼しい衣装になるのだ。

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