今こそ知っておきたい抗ウイルス薬

「ヘルペス」と呼ばれる2種類は別々のウイルスとして区別

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写真はイメージ(C)PIXTA

 ここ数カ月、世界中で大騒ぎになっている新型コロナウイルスが最も身近なウイルス感染症といえる状況ですが、一般的に身近なウイルス感染症といえばインフルエンザでしょう。さらに、「風邪の華」とも呼ばれる口角炎の原因となる「ヘルペスウイルス」も身近なウイルスのひとつです。

 ヘルペスウイルスには、上記の口唇ヘルペスを起こす単純ヘルペス(HSV)や、帯状疱疹を引き起こす水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)など、ヘルペスウイルス科として9種類が存在します。主に、単純ヘルペスと水痘・帯状疱疹ウイルスの2種類を指して「ヘルペス」と呼ぶことが多いのですが、別々のウイルスとして区別されます。

 単純ヘルペス感染症では、口唇ヘルペスのほかに性器ヘルペス(陰部にできるヘルペス)が有名です。風邪などで体の抵抗力が落ちた際などに発症し、触れると他人にうつるため注意が必要です。

 水痘・帯状疱疹ウイルス感染症としては、水ぼうそう(水痘)と帯状疱疹が挙げられます。水ぼうそうはウイルスが初めて感染した時に発症し、一生に一度だけ感染します。水ぼうそうは空気感染するので、感染者とは距離を取ることが必要になります。

 帯状疱疹は、症状として腹部など半身に帯状の水ぶくれができる疾患です。激しい痛みを伴い、痛みだけが残る帯状疱疹後神経痛が生じることもありますから、ガマンせず早めに治療を開始することが重要です。

 次回はヘルペスウイルス感染症の予防と治療薬について詳しくお話しします。

神崎浩孝

神崎浩孝

1980年、岡山県生まれ。岡山県立岡山一宮高校、岡山大学薬学部、岡山大学大学院医歯薬学総合研究科卒。米ロサンゼルスの「Cedars-Sinai Medical Center」勤務を経て、2013年に岡山大学病院薬剤部に着任。患者の気持ちに寄り添う医療、根拠に基づく医療の推進に臨床と研究の両面からアプローチしている。

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