和式生活が健康を作る

日本伝統の「ふんどし」が新型コロナの影響で静かなブーム

静かなブーム
静かなブーム(C)日刊ゲンダイ

 古い、堅苦しい、といった悪いイメージを抱く日本伝統の「ふんどし」は、いつの間にか、下着の世界から消えてしまった。

 今、ときどき見かけるふんどしは、下町の祭りに、神輿を担いで練り歩く、元気な男程度である。

「越中(富山県)ふんどし」「クラシックパンツ」と呼称され、有名デパートの隅などで息をしていたふんどし。長年、化石状態だったが、なぜか今日、緩やかに復帰しているのだ。

 原因は新型コロナウイルスの感染である。国民の健康志向が高まり日本の優れた生活様式を見直そうという中で、ふんどしも再燃したのである。

 10年前、東京・渋谷に設立された「一般社団法人・日本ふんどし協会」(中川ケイジ会長)がある。同協会の目的は、ふんどしの理解と関心を高める普及活動の実践だが、「コロナ騒ぎが起こってから問い合わせが増えましたね。ふんどしの生産はすべて、東日本大震災の被災地、福島で行っておりますが、男女4対6で、月平均、1000枚ぐらいの注文が来ております」(中川ケイジ会長)。

人生はふんどし1枚で変えられる」などの著書を持つ中川会長は、もちろん、ふんどし派である。NHKの朝の番組でも放送されたことから、講演の依頼も増えた。

「私はもともとサラリーマンで、重いうつ病も経験しましたが、とにかく、ふんどしは健康にいいのです。とくに、寝ているときでも、ゴムパンツではないので体への締め付けがありません。開放的で睡眠の質が確実に上がります」(中川会長)

 睡眠中は温熱性発汗があり、その汗は下着に吸収される。皮膚にぴったり付いた下着は、酸素や通気性を失い、さらに多湿になるために、細菌の繁殖場所にもなりかねない。

 健康的な観点から、ふんどしの利用を勧めている医師は、「アイビー大腸肛門クリニック」(東京・巣鴨)の山田麻子院長だ。

 下半身を締め付けない開放的なふんどしは、熟睡を誘い、血液やリンパの流れも妨げないからだという。

 静岡県内に住む団体職員のMさん(71)も10年来のふんどし愛用者である。

「きっかけは肝臓がんの手術でした。手術痕に触れるパンツのゴムが痛く、ふんどしに切り替えたのです。トイレもスムーズで快適です。妻が布地を購入して、1枚10分ほどで作っていますよ」

 中川会長が10年前、ふんどし協会を起こしたとき、法人事務所への問い合わせが月にわずか5件程度。現在は200倍の1000件を超えた。中川会長は「早くコロナを終わらせ、ふんどしを締め直して、国も元気になりたいですね」と話している。

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