今こそ知っておきたい抗ウイルス薬

「サイトメガロウイルス」免疫の低下で重篤化を招く危険が

写真はイメージ
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 新型コロナウイルス感染症の第2波の発生が心配されています。ウイルスは新型コロナウイルスだけではありませんが、感染予防を意識的に実践することは、他のウイルスの感染対策にもつながります。

 ウイルスの感染経路には飛沫感染だけでなく、空気感染や接触感染、母子感染などさまざまです。ですから、ウイルスの特徴や治療法を知ることも大切です。

 今回はヘルペスウイルスの一種で、ヘルペスウイルス5型に属する「サイトメガロウイルス」を取り上げます。サイトメガロウイルスはどこにでもいるウイルスで、体の分泌物と接触によってうつります。つまり、飛沫感染でも性行為などの接触によっても感染するということです。また、母子の垂直感染もみられます。

 感染してもほとんどの人では何の症状もみられませんが、免疫機能が低下している場合は体内で休眠しているウイルスが再活性化するなど、症状が重篤化することがあります。

 軽症の場合は発熱や疲労感といった症状ですが、重篤になると、脳、肺、肝臓、腸などの臓器を侵したり、網膜炎によって失明に至るケースもあります。

 胎児のときに感染した子供や、エイズや臓器移植などで免疫機能が低下している人では、ウイルスが再活性化して重篤化する可能性が高くなるため要注意です。また、抗がん剤や免疫抑制剤の副作用によって免疫機能が低下するケースもあるので、同じく注意が必要です。

 これらの免疫低下が起こる可能性がある場合には、「バルガンシクロビル」や「レテルモビル」といった抗ウイルス薬を使った予防的な治療で発症や重症化を防ぎます。

 健常者は感染しても問題ないとはいえ、健常者から免疫不全など特定の背景がある患者に感染させてしまうと、重篤化を招くリスクがあります。ですから、健常者でもサイトメガロウイルス感染への配慮が必要といえます。

神崎浩孝

神崎浩孝

1980年、岡山県生まれ。岡山県立岡山一宮高校、岡山大学薬学部、岡山大学大学院医歯薬学総合研究科卒。米ロサンゼルスの「Cedars-Sinai Medical Center」勤務を経て、2013年に岡山大学病院薬剤部に着任。患者の気持ちに寄り添う医療、根拠に基づく医療の推進に臨床と研究の両面からアプローチしている。

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