血管・血液を知る

二次性高血圧症はホルモンや睡眠の異常、遺伝、薬剤で起こる

写真はイメージ
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 国民病といわれる高血圧症は、生活習慣に限らず加齢や遺伝的要因、そして内科的病気も関わっていると考えられています。

 国民の3分の1以上、50歳を過ぎると半分以上が高血圧症にかかっていると推定されます。しかし、厚労省の統計などを見ると、通院患者数は全体の約3割程度に過ぎません。

 高血圧症は、原因によって大きく「本態性高血圧症」(約9割)と「二次性高血圧症」(約1割)の2種類に分けることができます。遺伝的体質に加え塩分過多など生活習慣が主要な要因になる本態性高血圧症に対し、高血圧症の原因になる病気を特定できる高血圧症を「二次性高血圧症」といいます。

 血圧の調整には、血流量、血管の抵抗性やホルモンバランスなどが重要な役割を果たします。これを調節する腎臓の働きの減弱、腎臓血管の狭窄(狭くなる)、あるいは副腎の褐色細胞腫(副腎の腫瘍でノルアドレナリンなど昇圧物質を出す)、末端肥大症(成長ホルモンが異常分泌する腫瘍)、そして原発性アルドステロン症、クッシング症候群(ステロイドホルモンのコルチゾールが過剰に分泌)などのホルモン異常が原因となり、高血圧症が生じることがあります。これを二次性高血圧症といいます。

 頻度的には睡眠時無呼吸症候群(SAS)によるものが一番多いのですが、上記の病気以外に、消炎鎮痛薬などの薬剤の副作用でも二次性高血圧症がもたらされることがあります。血液や尿検査でほとんどが診断できますが、超音波検査などの画像検査が必要な時もあります。

■脳卒中や心筋梗塞の原因に

 高血圧症が怖いのは、症状もなく徐々に動脈硬化を進行させ、脳卒中(脳梗塞など)や虚血性心疾患(心筋梗塞など)を引き起こすことです。ですから高血圧症と診断されたら、第一に生活習慣の改善に取り掛かってください。

 つまり、適度な運動や塩分を控えた食事を心がけることです。

 さらに、ストレスの減少など生活スタイルの是正を行っても、高血圧症の改善が見られない時はどうするか。次の方法としては、降圧薬で治療するしかありません。原則的には、収縮期血圧140㎜Hg、あるいは拡張期血圧が90㎜Hg以上になったら治療を開始し、130㎜Hg/80㎜Hg以下にコントロールすることです。

 降圧薬としては、血管を拡張させるカルシウム拮抗薬、血圧上昇作用を持つアンジオテンシンⅡの産生を抑えるAT1受容体拮抗薬やアンジオテンシン変換酵素阻害薬、塩分を排出させる利尿薬、カテコールアミン(交感神経伝達物質等)を遮断するαやβ遮断薬などが代表的なものです。

東丸貴信

東丸貴信

東京大学医学部卒。東邦大学医療センター佐倉病院臨床生理・循環器センター教授、日赤医療センター循環器科部長などを歴任。血管内治療学会理事、心臓血管内視鏡学会理事、成人病学会理事、脈管学会評議員、世界心臓病会議部会長。日本循環器学会認定専門医、日本内科学会認定・指導医、日本脈管学会専門医、心臓血管内視鏡学会専門医。

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