男性のペニスは必要なときは硬く大きくなって、普段は軟らかくて小さくなるという機能的なつくりになっています。それは体の他の部位と違って、ペニスの内部には骨がないからです。どうしてなのでしょう。
一般に、ほとんどの哺乳類のオスのペニスには「陰茎骨」という骨が存在しています。場所は亀頭内部の尿道の上付近にあり、他の骨とは連結しておらず独立しています。その大きさや形状は、同じ科目の動物でもさまざまです。たとえばチンパンジーの陰茎骨の長さは約7ミリ、ゴリラは約12ミリ、セイウチにいたっては約60センチといわれます。人間のように陰茎骨を持たない哺乳類は例外的な存在なのです。
なぜ、哺乳類のオスに陰茎骨が存在するのか。科学的には解明されていませんが、一説では陰茎骨が性交時にペニスを支えることで、性交時間が増えるためといわれています。では、どうして人間の陰茎骨は進化の過程で消失したのでしょうか。
2016年にロンドン大学の研究チームが科学誌に興味深い論文を発表しています。それは陰茎骨を持つ動物と持たない動物の交尾の違いを比較評価したものです。それによると、陰茎骨の役割は交尾時の長時間の挿入(3分以上)をサポートするもので、交尾時間が長い哺乳類ほど比例して陰茎骨も長くなるとしています。
さらに長い陰茎骨は、メスを取り合う生殖競争の激しさとも相関していたとしています。つまり「競争相手が多く、交尾時間が長い」ということが、陰茎骨を持つ哺乳類の交尾の特徴という見解です。交尾時間が長ければ、それだけメスが他のオスと交尾する機会が減り、自分の遺伝子を残すことができるわけです。
一方、人間の場合はどうでしょう。研究チームは、190万年前のホモ・エレクトス(原人)の頃から「一夫一婦制」が広がったため、女性をめぐる生殖競争が起こりにくくなり、次第に消失していったと推測しています。それに人間の男性の場合、挿入から射精までの時間が平均2分程度とし、わざわざ陰茎骨でサポートする必要がないとしています。
人間に近い霊長類のチンパンジーやボノボは、挿入時間が平均7~15秒と短いのですが、約7ミリの陰茎骨があります。これは1匹のメスが複数のオスと乱交するため、完全に消失せずに保持していると推測しています。ほかにも人間の陰茎骨の消失には諸説あり、股間に硬い骨があると「二足歩行に邪魔だから」という仮説もあります。
専門医が教える パンツの中の秘密