和式生活が健康を作る

足腰の筋肉が鍛えられる「古武道」は転倒予防にも役立つ

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

「古武道」は、およそ1000年の歴史を持つ。

 鋼のような体を形成し、とりわけ足腰の強靱力、さらには人並み外れた反射神経や、動体視力にもたけた古武道の達人者たち。

 では、古武道を健康面からとらえた場合、具体的にどのような利点を持つのだろうか。

 3000人の門弟を育ててきた沖縄古武道の「昇空館」(本部・千葉県佐倉市)館長、向谷匡史氏に、古武道と健康について話を聞いてみた。

「田中角栄『情』の会話術」など多くの著書を持つ作家で僧侶(浄土真宗本願寺派)でもある向谷館長は、1950年生まれ。70歳になるが、顔の艶は青年のように若い。

 高校時代から空手を始めて、武道歴50年。あわせて「沖縄古武道」を体得し、現在、千葉、埼玉、神奈川などに道場を持つ。

「今はコロナで道場を閉めておりますが、修練者は幼稚園児から、シルバー人材センターに登録している86歳の高齢者まで幅広い。古武道は性別や経験、年齢に関係なく、誰でも体得できます。とくに高齢者の健康を考えたとき、古武道は、ほとんどケガをしない素晴らしい心技運動といえるでしょう」

 古武道は、格闘技と違い、相手を倒すという思想はない。

 護身術を中心に、自らの術を磨く。闘う相手は他人ではなく、自分だけということになる。

「相手に近づく“すり足”の歩き方、総じて腰を落として動く心技ですから、筋肉が足腰に集中します。歩行機能を支える足腰の主な筋肉は、腰の回りの筋肉(臀筋群)、太ももの筋肉(大腿筋)、ふくらはぎ(下腿三頭筋)などの筋肉です。古武道はこれらの筋肉を鍛えますので、年老いても物につまずくリスクが軽減される。つまり高齢者にとって古武道の修練は、転倒の予防にもなるのです」

■精神力も養える

 また、武道修練による手足の位置関係。相手に隙を見せない姿勢の保全。結果、周辺で起こる障害への予防や注意力も自然に身に付けることになるという。

「加齢による体の衰弱を抑えることは若さを保つことと同意。これはボケや認知症の予防にもつながります。正確なデータはありませんが、高齢者に多い肺炎などを抑える心肺機能の活性化にも結び付きます」

 腹の底から声を出して気合を入れる。同時に体を激しく動かしても、息切れすることなく、呼吸をするリズム感を失わないことも心肺を丈夫にするという。

 高齢化社会で、人身事故を起こす高齢者の交通事故が後を絶たない。

 加齢に並行して、「反射神経」が鈍くなり、目で物の動きを追う(視認)「動体視力」も落ちてくるからだ。

「高齢者はそのことに気が付かない。“俺はまだ大丈夫”だという過剰な自信です。しかし、古武道は、若者に劣らない反射神経と動体視力を持つことが可能なのです」

 そうはいっても、古武道修練者とはいえ、風邪もひくし、血圧高めの高齢者もいる。

「古武道は体を鍛え、同時に精神力も高まります。病気にかかれば病院の世話になります。でも、たとえ病気にかかっても落ち込むことなく冷静に、平常心を失わない精神力を体得することが武士時代から続く古武道の利点ともいえるでしょう」

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