今こそ知っておきたい抗ウイルス薬

C型肝炎ワクチンはまだないが、B型は古くから開発されている

写真はイメージ
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 新型コロナウイルスの世界的蔓延によって延期された東京五輪は、ちょうど1年後に開催される予定になっています。

 ただ、新型コロナは依然として世界中で猛威を振るっているため、早急なワクチン開発が望まれています。イギリスや米国、日本でもワクチン開発や臨床試験が進んでおり、早期の承認販売が期待されていますが、ワクチンはどんなウイルスに対しても「できる」というものではありません。

 例えば、肝炎ウイルスの中でも、前回紹介したC型肝炎ウイルスに対するワクチンはできていませんが、B型肝炎ウイルスに対するワクチンは開発され広く用いられています。

 B型肝炎ウイルスのワクチンは1960年代に開発され、1976年には開発者の医師ブランバーグ氏がノーベル医学・生理学賞を受賞するなど歴史は深く、その発明は画期的だったことがわかります。

 B型肝炎は、C型肝炎と比べて慢性肝炎や肝がんといった重症に移行しにくいことから、予防が重要視されていました。とりわけ、主な感染経路である母子感染や乳幼児期の感染を防ぐためにもワクチンの接種が重要でした。日本では、1980年代に始まった母子感染防止事業でワクチンが広く使われ始めたことにより、25歳以下のB型肝炎ウイルスの持続感染者数は世界で最も少ない国のひとつとなりました。

 しかし、成人になってからも、性行為や医療の針刺し事故などで感染する可能性は依然としてあるため、ワクチン接種はまだまだ重要です。また、ウイルスが変異して新しくなることで薬が効かなくなったり、併用薬によって免疫力が低下することで症状が再燃するという問題もあるため、今後も新たな薬やワクチンの継続的な開発が必要です。

 新型コロナウイルスでも、B型肝炎と同じように画期的なワクチン開発が一刻も早く完了し、世界に安堵がおとずれて欲しいものです。

神崎浩孝

神崎浩孝

1980年、岡山県生まれ。岡山県立岡山一宮高校、岡山大学薬学部、岡山大学大学院医歯薬学総合研究科卒。米ロサンゼルスの「Cedars-Sinai Medical Center」勤務を経て、2013年に岡山大学病院薬剤部に着任。患者の気持ちに寄り添う医療、根拠に基づく医療の推進に臨床と研究の両面からアプローチしている。

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