専門医が教える パンツの中の秘密

器質性EDではない証拠にも…「夢精」は恥ずかしくない

 思春期の頃に「夢精」を経験したことのある人は多いと思います。初体験のときにはビックリしたと同時に、パンツを汚してしまい何か罪悪感のようなものを感じたことだと思います。

 しかし、性行為やオナニーをしていないにもかかわらず、無意識に射精が起きてしまうことは、誰にでも起こり得る生理現象で「遺精(いせい)」といいます。遺精には大きく2種類あり、昼間の覚醒時に起こるものを「昼間遺精」、夜間の睡眠中に起こるものを「夜間遺精(夢精)」といいます。

 夢精は一生起こらない人もいますが、最初に経験するのは11~14歳ごろの2次性徴のときが多いようです。それは精液が活発に産生され始める年頃だからです。精液をためておく精嚢(せいのう)は、およそ3日で満タンになります。

 大人の体であれば通常、古くなった精液はタンパク質として体内に吸収されます。

 しかし、思春期の頃は古い精液を吸収する機能が未発達です。それにオナニーがまだ習慣化されていないので、満タンになった精液が新しい精液に押し出されるように夢精が起こるのです。

 夢精は、睡眠中のレム睡眠(浅い眠り)のときに、性的な夢を見ることで起こります。それは男性では、一晩に3~5回繰り返されるレム睡眠時に無意識に勃起する「夜間勃起(朝立ち)」が起こるからです。

 この夜間勃起と性的な夢が重なることで、性的情動が高まり射精に至るのです。

 もうひとつは、夢を見るレム睡眠時にペニスに手が触れたり、布団にこすれたり、圧迫されたりと偶発的な刺激が夜間勃起時のペニスに加わることで、脳内で性的な夢が形成されて射精が誘発されるというケースです。

 いずれにしても、睡眠中は副交感神経が優位になっていますので、交感神経優位の覚醒時よりも弱い刺激で射精に至るとされています。

 ですから、思春期の夢精は性成熟が順調に行われている証拠であり、恥ずかしいどころか、むしろ喜ばしいことでもあるのです。

 もちろん中高年でも、性行為やオナニーを長期間していない場合には夢精が起こることがあります。

 EDと思い込んでいる人でも、夢精があれば器質性EDではなく、心因性EDの疑いが高いといえるわけです。

 一方、昼間遺精は長期の禁欲をベースに、極度の緊張や精神的疲労などで誘発されます。ただし、前立腺炎や脊椎疾患、精神疾患などが原因で起きている場合もあります。1日に何回も遺精が起こるようなら受診した方がいいでしょう。

尾上泰彦

尾上泰彦

性感染症専門医療機関「プライベートケアクリニック東京」院長。日大医学部卒。医学博士。日本性感染症学会(功労会員)、(財)性の健康医学財団(代議員)、厚生労働省エイズ対策研究事業「性感染症患者のHIV感染と行動のモニタリングに関する研究」共同研究者、川崎STI研究会代表世話人などを務め、日本の性感染症予防・治療を牽引している。著書も多く、近著に「性感染症 プライベートゾーンの怖い医学」(角川新書)がある。

関連記事