病気を近づけない体のメンテナンス

脳<上>ニンニクを使った「アホエンオイル」で微小循環を改善

「アホエン」は生のままのニンニクには含まれない
「アホエン」は生のままのニンニクには含まれない(C)日刊ゲンダイ

 脳機能の低下を防ぐことは、「認知症」や「うつ病」「自律神経失調症」「依存症」などの脳の病気を予防するだけでなく、年を取っても若々しく生きるためのポイントになる。

 加齢による脳機能の低下を防ぐには、脳を活性化させる方法を習慣にするのがいい。がん・感染症センター都立駒込病院・脳神経外科の篠浦伸禎部長が言う。

「脳は普段から使っているほど血流がよく、活性化しています。いまは血液中のヘモグロビンの量と酸素飽和度の変化を調べる『NIRS(ニルス)』という検査法を行うと、脳の血流の変化や血管の反応を追うことができます。脳の活性を促す方法はいくつかありますが、食品で患者さんに勧めている習慣は、手作りのニンニク油『アホエンオイル』です」

 ニンニクは、古くから疲労回復や風邪予防などの効能が知られている。中でも強力な作用で注目されているのが「アホエン」という成分。ただし、生のままのニンニクには含まれておらず、細かく刻んだニンニクをオリーブオイルに漬け込むと溶け出してくる。また、100度以上の高温で壊れてしまうという性質を持つという。

 アホエンオイルを作るのに必要な材料(約10日分)は、ニンニク3片とオリーブ油150ミリリットル(エクストラバージンオイルに限る)のみ。作り方はこうだ。

①ニンニクをすりおろすか、包丁でできるだけ細かく刻む。

②そのニンニクを室温で2時間放置する(青く変色することがあるが、問題ない)。

③密閉容器に入れたオリーブ油の中にニンニクを入れ、室温で5日間放置する。

④5日後、ザルにふきんなどを併用して、ニンニクをこしたら出来上がり。

⑤密閉容器に室温で保存する。1カ月間は保存できる。

 このアホエンオイルを1日に大さじ1~2杯を目安に、直接飲むか、料理などにかけて取る。動脈硬化で狭窄した血管を拡張するような効果はないが、ストレスなどで一時的に狭窄を起こしている血管には有用。毎日取っている患者の中には、めまいや記憶力が改善する人が多いという。どんな作用が働くのか。

「作用メカニズムとして『微小循環』の改善が考えられます。微小循環とは、毛細血管の血流、微小な血液循環のことです。微小循環がよくなることで、脳の神経の働きを活発にし、めまいや記憶力を改善していると考えられるのです。さらに神経活動が活発になることで、脳がストレスに強くなっていく効果もあると思われます」

 アホエンオイルを勧めるのは、材料から見て副作用が考えにくいことと、安価で簡単に作れるからだ。篠浦部長自身も普段は大さじ2~3杯、仕事が忙しいときは4~5杯飲むことを習慣にしているという。

瞑想は認知症の防止にも役立つ
瞑想は認知症の防止にも役立つ(C)日刊ゲンダイ
「瞑想」も脳機能を改善させる可能性がある

 一見、脳を活発に使っているように見えない「瞑想」の習慣にも、脳機能の改善に効果がある可能性が高いという。それは脳機能を低下させる最大の原因のひとつが「ストレス」だからだ。

人間の脳全体の8割を占める「大脳」は、一番外側にある「大脳新皮質」と、その内側にある「大脳辺縁系」に分けられる。大脳新皮質は、創造力や理性、思想といった高度で複雑な感情や思考をつかさどっている。もう一方の大脳辺縁系は、食欲や性欲、快感や恐れといった本能的な情動をつかさどっている。

つまり、大脳辺縁系は人間が生命を存続するために自分を守るための機能が集まった脳。そのため何かストレスがあると過剰に反応して、不安感をあおったり、別の強い刺激に依存したりして現実から逃げようと暴走する。瞑想は、その暴走をコントロールできる脳に変えてくれるのだ。

「大脳新皮質と大脳辺縁系の境界に『帯状回』があり、扁桃核という部分に作用してストレスで過剰反応した大脳辺縁系をコントロールする働きがあります。その帯状回は刺激がないときは活動して、刺激があると活動が抑制される性質があります。ですから、瞑想で周囲からの刺激(情報)を“遮断”すると、帯状回が活性化され厚くなります。厚くなると脳の機能が強化され、それによって副交感神経が優位になり、乱れた自律神経が改善されるのです」

また、瞑想は帯状回だけでなく認知能力や注意力に関係する脳の部位も活性化され厚くなる(脳が大きくなる)という。そのため、認知症の防止にも役立つのだ。

次回は、脳を活性化させる「運動」と「飲料」を紹介してもらう。

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