病の克服は患者に聞け

新型コロナ<後編>抗体検査で過去も現在も陽性と判明して…

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 緊急事態宣言下でも通常勤務が続き、複数人での飲み会にも参加していた町田祐介さん(仮名・30歳)。飲み会の同席者に新型コロナウイルス感染が発覚し、2日後には町田さんも40度近い高熱を発症したため、「新型コロナだと確信していた」という。

 しかし、保健所と数カ所の病院からはPCR検査も診察も断られ、たらい回し状態のまま自宅で高熱と闘った。息苦しさから夜中に何度も目覚めて不安を募らせる日々も経験したが、結局、検査を受けられないまま1週間ほどで症状が治まり、本当に新型コロナだったのかどうかはっきりしなかった。

 念のため、町田さんは2週間ほど自主隔離生活を続け、特に問題がないことを確認してから出勤を再開した。

「あんなに不安な思いは二度と経験したくなかったので、それまでは緩かった感染対策に気を配りました。新型コロナに関係なく、普段からマスクをして通勤しているのですが、表面に触らないなど正しい装着の仕方を見直しました。手洗いを徹底して、なるべく人混みを避け、飲み会や食事会にも参加せずに、自宅と会社を往復するだけの生活に徹しました」

 そんな町田さんが、やはり新型コロナに感染していた事実がわかったのは6月上旬だった。職場復帰して間もなく海外出張を打診された町田さんは、新型コロナの抗体検査を受けることになった。日本からその該当国に入国するには、新型コロナに感染していないことを証明する必要があったからだ。

 同じく海外出張が予定されている2人の同僚と一緒に都内のクリニックを訪れ、採血による抗体検査を受けた。そのクリニックが使用している検査キットは新型コロナウイルスに対する「IgM」と「IgG」という抗体が作られているかどうかを調べるもので、当日中に結果がわかる。一般的には、感染して最初に作られるのがIgMで、その後にIgGが産生される。そのため、IgMが「現在の感染」、IgGは「過去の感染」を示すとされる。

 町田さんはIgMもIgGも「陽性」という結果だった。つまり、「過去に感染していた履歴があり、現在も感染している可能性がある」ということだ。

「過去の感染についてはやっぱりそうだったかという思いでしたが、『現在も感染している』という結果には驚きました。前回と違って思い当たる節はありませんでしたし、熱も咳も息苦しさもなく味覚も嗅覚も正常で、まったくの無症状だったからです」

 抗体検査の結果を受け、町田さんの海外出張は中止に。クリニックからはPCR検査を勧められ、保健所を紹介された。

 PCR検査の結果が出るまでは再び自宅待機となり、自主隔離生活に逆戻りとなった。

「一緒に抗体検査を受けた同僚2人は過去も現在も陰性でした。しかし、感染疑いがある自分の濃厚接触者という扱いで、PCR検査を受けることになりました」

 町田さんのPCR検査が実施されたのは抗体検査からおよそ10日後で、結果は「陰性」だった。

「とにかくホッとしました。抗体検査は偽陽性が少なくないそうですし、本当に再感染していたかどうかはわかりません。再感染したけれど、PCR検査を受けられるまでの期間に治まった可能性もあります。マスコミでは何度も感染している事例が報じられているので、自分もそうだったのかもしれません。いずれにせよ、また感染することだけは絶対に避けたい。ここにきて再び感染者が増えてきているので、さらに注意しながら生活しています」

 (おわり)

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