新型コロナの感染効率に関わる変異が世界中で起きつつある

新型コロナウィルスの電子顕微鏡拡大写真(米国立アレルギー感染症研究所提供)

 新型コロナウイルスの弱毒化が始まったのではないかとの報道が一部で見られている。日本国内で感染者数が増えている割に、重症者や死亡者が増加していないためだ。

 残念ながらウイルスの弱毒化を決定づけるようなウイルス学的なデータは現時点では報告されていない。一般に知られているように、PCR検査数のキャパシティーが増大したことにより多くの感染者を見つけられるようになり、軽症・無症状の感染者も多く発見されるようになったこと、新型コロナウイルス感染症に対する治療法が以前よりも適切になったことが大きいのだろう。

 しかし、新型コロナウイルスのゲノムに生じた弱毒化に向けた変異をうかがわせる研究報告が世界中でなされている。その一端を紹介したい。

 新型コロナウイルスに生じた変異の中で、最も集中的に調べられているのは、コロナウイルスの名前の由来ともなった突起状の「王冠」のような形状のスパイク(S)タンパク質である。Sタンパク質がヒト細胞の受容体と相互作用して、細胞との膜融合、すなわちヒト細胞への侵入に関与する。したがって、Sタンパク質の変異(アミノ酸置換)は、新型コロナウイルスの感染効率の上昇や減少に関与する可能性がある。

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