専門医が教える パンツの中の秘密

女性より男性に多い 排尿後に「ブルッ」とするのはなぜ?

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 ほとんどの男性が寒いとき、トイレでおしっこをした後に体が「ブルッ」と震えた経験があると思います。なぜ、身震いが起こるのでしょうか。それは体内にたまっている温かい尿を一気に外に出すことで、体の熱が急に奪われるからです。

 つまり、排尿によって一時的に体温が下がることで短い身震いが起こるのです。冬の寒い風呂場の脱衣所で、衣類を脱いだときにも震えが起こります。また、極度に寒い場所にいると、口や体がガタガタと震えます。

 これらはすべて骨格筋を小刻みに収縮させることで、体の熱を作り出しているのです。このような体温の回復を主な目的とした、無意識に起こる身震いのことを「シバリング」といいます。

 排尿後のシバリングは、女性よりも男性の方が起こりやすいようです。それは男性にはペニスというホースが付いているからです。チャックを下げてホースを引き出し、排尿します。ですから排尿前に体が冷えることはありません。それであまり寒いと感じていなくても、排尿で深部の体温が下がって震えるのです。

 一方、女性は排尿前にお尻を丸出しにしなくてはいけません。ですから排尿前に、お尻を出した時点で寒気にさらされて身震いが起こりやすいというわけです。しかし、女性でも排尿後のシバリングは起こるようです。

 寒いと「鳥肌が立つ」のも冷えから体を守るための防御反応です。寒いと体温調節中枢から指令が出て、交感神経が活発になります。そして体表面近くにある血管を収縮させて、体の熱を逃がさないようにします。

 同時に、全身の産毛にも働きかけます。産毛は少し斜めに生えていて、毛根には「立毛筋」という微小の筋肉が付いています。交感神経によって立毛筋が収縮して、毛穴が閉じるように盛り上がったのが鳥肌です。立毛筋の収縮も熱を産生しているのです。

 では、どうして寒いとトイレ(尿)が近くなるのでしょうか。人間は暑い季節は毛穴からたくさん汗をかきます。気づかないうちに体内の水分量は減っていきます。

 そこで体は尿の回数を少なくして、体内の水分量を調節しているのです。反対に寒い季節はあまり汗をかかないので、体内の水分量は余ります。そのため自然とトイレの回数が増えるのです。

 また、寒いと膀胱の筋肉が縮みやすくなり、尿を出そうとする神経の働きが敏感になります。結果、トイレが近くなるのです。

尾上泰彦

尾上泰彦

性感染症専門医療機関「プライベートケアクリニック東京」院長。日大医学部卒。医学博士。日本性感染症学会(功労会員)、(財)性の健康医学財団(代議員)、厚生労働省エイズ対策研究事業「性感染症患者のHIV感染と行動のモニタリングに関する研究」共同研究者、川崎STI研究会代表世話人などを務め、日本の性感染症予防・治療を牽引している。著書も多く、近著に「性感染症 プライベートゾーンの怖い医学」(角川新書)がある。

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