コロナ第2波に打ち勝つ最新知識

公衆衛生の専門医語る 家庭内リスクコミュニケーションのススメ

マスクをして通勤する人々
マスクをして通勤する人々(C)日刊ゲンダイ

 新型コロナウイルス感染症には従来の病気とは違ういくつかの特徴がある。そのひとつに、メディアに登場する専門家の意見がバラバラで何が正しいのか、素人には分かりにくいことが挙げられる。しかもあるウイルス学専門の医師が警告しているように「現代社会では病院経営やビジネスの専門家が小学生の自由研究のような“ぼくのかんがえた、最強のコロナ理論”を思いつきで述べることは誰にも止められない」状態だからなおさらだ。そのため、情報の受け手がよほどしっかりしていないと、誤った行動を取ることになりかねない。そうならないためにはどうすべきか? 公衆衛生に詳しい、岩室紳也医師に聞いた。

「いまは新聞、テレビ、雑誌、SNSなどから情報を得ている人が多い。その中には正確、かつ有用な情報もあるのですが、客観的でない、生活に有用とは言えないものもある。見ている側も自分が気になる情報だけを選んで読むため、独り善がりな偏った情報になりがちです。だからこそ、友人間や職場で各人が得た情報をふるいにかけるために家庭を含め、いろんな人とのリスクコミュニケーションが必要です」

 リスクコミュニケーションとは、あるリスクについて利害関係者の間で情報を共有し、対話や意見交換を通じて意思の疎通をすること。それによって、リスクに関する相互理解を深め、信頼関係を構築していく。

 本来は、専門家同士が行うものだが、いまは友人同士や家庭で実践する必要があるという。

 リスクコミュニケーションは5つの段階で進めていく。「情報の伝達」「意見の交換」「相互の理解」「責任の共有」「信頼の構築」だ。

「人によって、新型コロナについて最新の医学知識まで得ている人もいれば噂話レベルの情報しかない人もいる。まずは友人や家族で新型コロナについて話し合い、情報共有することが大切です」

■情報は対話や意見交換することで正確になる

 しかし、情報をただ教え合うだけでは、混乱するだけだ。その情報が正確で各人、各家庭で必要かつ実践可能か、意見を出し合い、どう行動するか話し合う必要がある。

「例えば、ソーシャルディスタンスは『話せば(感染予防方法が)分かる』人たちではなく、『離せば(感染が減るのが)分かる』という地域向けの国際保健の発想です。これをそのまま取り入れるべきか否かを考えるためのリスクコミュニケーションが必要なのです。とくに独り善がりでしゃくし定規になりがちな20~30代の独身者は幅広い世代と意見交換した方がいい」

 ただし、その目的はリスクに対する相互理解を深め、どのような予防策を選択するかの合意形成をするためのもので、誰が正しいか、何が正しいかではない。

「ですから、自分たちの結論を他人に強要してはいけません。また、情報の選択で気をつけたいのが、情報の発信者の素性です。実際に新型コロナ感染症の患者を診ている人や現役の研究者の情報は貴重ですが、英語論文から得た情報に自身の感想を乗せて垂れ流しているものもある。新型コロナの研究は世界中で進み、ネットには玉石混交の論文があふれている。いまは専門家ですら正解を語ることが難しい。結局何が正しいかは、個人ができるだけ多くの情報を集めてより多くの人と意見を交換して、最終的に自分で判断する必要があるのです」

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