失明リスク高い「加齢黄斑変性」はサングラスと食事で予防

日差しのきついこの時季、サングラスでの日光遮断は、すぐできる予防法だ
日差しのきついこの時季、サングラスでの日光遮断は、すぐできる予防法だ(C)PIXTA

 放置すれば失明リスクのある病気のひとつが、加齢黄斑変性だ。東京女子医大眼科教授の飯田知弘医師に話を聞いた。

 加齢黄斑変性は、加齢が主な原因で発症する目の病気だ。

 網膜の中心部にある「黄斑」に異常が生じ、見たいものが見えなくなる。「人の顔が認識できない」「新聞や本などの文字を読めない」「運転できない」などが起こり、治療を受けないでいると失明に至る。

 加齢黄斑変性には、黄斑の下に水がたまる「滲出型」と、黄斑の細胞が萎縮する「萎縮型」がある。日本で圧倒的多数を占めるのが滲出型だ。

「滲出型は、特に男性では有病率が年々、著しく増加しています」(飯田医師=以下同)

 滲出型は血管内皮増殖因子(VEGF)によって細い新生血管ができ、それが破れたり血液や水分が染み出したりする。治療の主流は、VEGFの働きを抑制する「VEGF阻害薬」を目の中に注射する「抗VEGF療法」だ。

「非常に効果のある治療法ですが、問題は、1回で治療が終わりではない点。対症療法なので、継続して複数回治療を行わなければなりません」

 2年ほどで終わる人もいれば、4~5年かかっても治療が終わらない人もいる。そのため、途中で挫折してしまう人もいる。治療を中断してしまった人へのアンケート結果を見ると、中断しないために必要だったこととして、「経済負担の軽減」「通院する時間的な余裕」「注射回数の軽減」が挙がっている。

■新薬は3カ月に1度の治療でOK

 そこで今年新しく登場したのが、ブロルシズマブ(商品名ベオビュ)だ。国内で使用できるVEGF阻害薬としては、4つ目になる。従来薬との大きな違いは、注射の間隔が長いこと。

 従来薬でよく使われているアフリベルセプト(商品名アイリーア)の場合、4週間に1回の注射を3回行い(導入期)、その後(維持期)は8週間隔で投与する。一方、新薬のブロルシズマブは導入期は「4週間に1回×3回」と従来薬と同じだが、維持期は12週間隔でOKだ。

 アフリベルセプトと比較した臨床試験(日本人を含む国際共同第3相試験)では、「48週(1年間)において、新薬は従来薬より視力改善の変化が劣らないこと」、そして「16週と48週において、新生血管から漏れている水でできるむくみの改善が新薬の方が従来薬より良かったこと」が分かった。

 さらにこの試験では、「どれくらいの割合の人が、12週間隔のまま継続できるのか」も調べた。もし12週間隔で血液や水が漏れるようなら投与期間を短くしなければならないが、試験では55・6%の人が12週間隔を1年間継続。2年継続できた人も45・4%いた。

「最初から薬がよく効いた人では、85・4%が1年間、12週間隔を継続できました」

 つまり、従来薬と同じ、人によってはそれ以上の効果が得られながら、患者が求める「医療費などの経済負担の軽減」「通院する時間的な余裕」「注射回数の軽減」が実現できる可能性が新薬にはあるのだ。

「安全性に関しては、先に承認されたアメリカでは網膜血管炎や網膜血管閉塞が、少ないですが報告されています」

 薬の投与は慎重にしなくてはならないが、治療の選択肢が増えたことは喜ばしい。

 加齢黄斑変性は、予防も重要。発症リスクを高める要因には加齢のほか、喫煙、野菜や果物など抗酸化作用のある食物の不足、悪玉と呼ばれる脂肪の過剰摂取、日光暴露、運動不足や肥満がある。加齢は避けようがないが、禁煙や食事改善、サングラスなどで日光遮断、運動、肥満解消などは取り組める予防策だ。

 米国の研究では、抗酸化サプリメントの摂取で25%リスクを減らせたとの結果が出ている。これを日本人にそのまま当てはめられるわけではないものの、野菜や果物を積極的に取ることは、加齢黄斑変性以外の病気のリスク対策にもつながる。

「50歳以上は定期的な眼底検査も望ましい。緑内障など、ほかの失明リスクが高い目の病気の早期発見もできます」

 まずは食事から。

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