みんなの眼科教室 教えて清澤先生

潰瘍性大腸炎になると目にはどんな症状が出るのですか?

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写真はイメージ(C)PIXTA

【Q】潰瘍性大腸炎を含む炎症性腸疾患には目にどのよう症状があらわれますか?(38歳会社員)

【A】安倍晋三首相が潰瘍性大腸炎の再発を理由に首相の座からの退陣を表明し、自民党総裁選が始まりました。潰瘍性大腸炎とクローン病は炎症性腸疾患と総称されます。しばしばその疾患を持つ患者さんが眼科にも紹介されます。今回は、この炎症性腸疾患でどのような眼疾患がどの程度の頻度でみられるのかをお話しします。

 炎症性腸疾患は原因不明の慢性疾患です。炎症性腸疾患の有病率は北米と北ヨーロッパで高いのですが、アジアでも都市化に伴って炎症性腸疾患の発生率と有病率が増加しています。 腸以外の症状は皮膚、関節、肝臓、そして目で発生する可能性があります。その眼科合併症の発生率は3・5%から43%と報告されています。

 眼科合併症には、一次性合併症と二次性合併症と併発症があります。一次性合併症は疾患活動性に関連していて、その状態はステロイド療法または外科的治療後に改善されます。二次性合併症は、強膜炎後のステロイド誘発性白内障や強膜軟化症などの一次性合併症の結果として発生するものです。自覚症状が無くて定期的な目の検査で見つかる偶発的合併症としては結膜炎とドライアイ症候群が含まれています。

 現在認識されている眼科合併症には、「上強膜炎」、「強膜炎」、「白内障」、「続発性緑内障」、「ブドウ膜炎」、「視神経炎」があります。西欧諸国では、上強膜炎が症例の29%で発生しており、疾患活動の指標とされています。また強膜炎は18%の症例に発生し、ぶどう膜炎は17%の症例に発生が報告されています。「上強膜炎」、「強膜炎」、「ぶどう膜炎」は深さの違いはありますが、いずれも白目の部分に充血する炎症と考えてよいでしょう。

 2017年に韓国の済州島から報告された「炎症性腸疾患患者の眼症状」での東洋人でのクローン病患者36人と潰瘍性大腸炎患者25人の合計61人での報告によれば、眼科症状は44例(72・1%)が陽性と高頻度でした。虹彩炎や上強膜炎など重要な一次性眼炎症は8・2%の患者にみられ、偶発的合併症ではドライアイ症候群が57・4%で有意に多かったそうです。

 炎症性腸疾患の患者さんは眼科検査を一度は受けることをお勧めします。

清澤源弘

清澤源弘

1953年、長野県生まれ。東北大学医学部卒、同大学院修了。86年、仏原子力庁、翌年に米ペンシルベニア大学並びにウイリス眼科病院に留学。92年、東京医科歯科大眼科助教授。2005-2021年清澤眼科院長。2021年11月自由が丘清澤眼科を新たに開院。日本眼科学会専門医、日本眼科医会学術部委員、日本神経眼科学会名誉会員など。

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