病の克服は患者に聞け

網膜円孔・網膜裂孔<3>レーザー照射で後頭部に軽い痛みが

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写真はイメージ(C)PIXTA
レーザー照射時間は10分ほど

 猛暑日が続いた8月中旬。目の検査で、「網膜円孔・網膜裂光」と診断された埼玉県内に住む高野稔さん(仮名・70=自営業)は重い足取りで、自宅近所の眼科病院を再訪した。

 2日前、診察を受診したとき、担当医師から、

 「レーザー治療になりますが、注射を打つぐらいの痛みが少しあります」

 と、告げられていたからである。

 眼に注射でも打つのか!高野さんにとって、高校1年時の視力検査以来、眼科の治療など半世紀ぶりである。

 病院の受付けで、検査時に渡されていた「網膜円孔・網膜裂孔凝固説明書承諾書」に署名し、提出した。

「私は今回実施を予定された手術の必要性及び内容によって手術を受けることを承諾します」の書き出しで始まる「承諾書」には、まず、治療の内容である「レーザー光凝固とは」と題し、こう説明されていた。

 「網膜の循環不全のところを直径0・1~0・2mmの大きさで凝固します。凝固した部分は弱いやけど負った形になりますが、傷の治る働きでそのまま固まってしまいます。これを凝固斑といい、これを網膜裂孔や孔の周囲に数百程度照射して固めます」

 ちなみにこの治療は、視力回復を目的としたものではないという。

 高野さんは、待合室で座ったまま麻酔の目薬を挿入され、10分後、看護師から治療室に案内された。

「薄暗い部屋でした。マスク着用のままで結構ですと言われまして、診察台に顔を乗せますと、頭を固定するために、ねじり鉢巻きのようなバンドが締められました」(高野氏)

 バンドで頭を固定する目的は、レーザーが照射されたとき、その衝撃で頭を後方に動かしてしまう患者もいるからだ。

 治療は右目である。専用のレンズが装着され、レーザー治療が開始された。

 「眼に強力なライトを浴びせられました。強い光で、眼底を観察しながらの施行です。レンズに、自分の眼に走っている毛細血管が、映されるように見えました。レーザーが照射されますと、心配するほどの痛みはありませんでしたが、後頭部周辺に、鈍痛のような軽い痛みを覚えましたね」

 局部の網膜円孔・裂孔の周りにレーザーを照射し、網膜が隔離しないように焼き固める治療である。

 レーザー治療の時間は約10分と短い。終了後、担当医師に高野さんは、

「思った以上に痛みは感じませんでした」

 と、感想を述べた。すると担当医は、「空いた穴の大きさにで、レーザーの強度を変えます。高野さんはまだ小さかったために、弱いレーザーを当てました。レーザーが強いと、少し痛みが生じます」

 レーザーの治療によって、約90~97%の確率で、網膜剥離の発生を予防することが可能だという。

 だが、先の承諾書にはこうも記されていた。

 「症例によっては、網膜円孔・裂孔に対してレーザー治療を行っても網膜剥離が発生することがあり、その場合は手術が必要になることがあります。ごくまれにレーザー治療後に白内障が進んだり、眼底出血、などが起こることがあります」

 術後、高野さんは、経過観察として1週間後の診察を告げられた。

 この日は手術料金(網膜光凝固術)を含む総額が、15,680円(2割負担)である。

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